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[コメント] 星と俺とできめたんだ(1965/日)

「星と俺とできめたんだ」という西郷の持ち歌を元にした歌謡映画なのだが、それにここまで入り組んだ、たわけた話で応じるこの脚本に時代の歪みを感じる。渡が西郷の剣道と恋のライバルであること以上に、その存在自体が曲に合わせた邪魔者であり必要ない。兄の敵討ちに絞れば唄とは無関係でも散漫な出来にはならなかった。お祭り映画にしても酷すぎる。
水那岐

ふざけた点はといえば、渡が登場すれば「アメリカ留学中の俊才で…」十朱が出れば「本場フランスでシャンソン歌手たちに揉まれた…」などとハッタリの肩書きがつき、剣道試合で両雄が登壇すれば「出るか必殺××返し」などと名前だけは怖ろし気な技が語られるのは正直うんざりした。こんなものはその後ドラマには全く登場しないのだ。あるいは初期の脚本には出ていたのかもしれないが、蛇足であることに変わりはない。

そんなことよりは、この物語のオトナたちが「自分たちは大人だ」と言い張っておきながら全く子供じみた穴だらけの作戦を練り、あちこちで誰の耳があっても不思議でない場所で堂々と口にし、結局墓穴を掘ってしまう顛末には呆れ返る。日活黄金期のアクション映画が子供だましなシロモノに支えられていたことは知っているが、この話にはもはや脚本家が頭を捻った痕跡はまるでなく、これでは大人の娯楽にはなり得ないな、と思わされた一作だった。

(評価:★1)

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