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[コメント] ジュディ 虹の彼方に(2019/米)

自由と愛情を渇望し、その片方も得ることができず消耗品として消えてゆく大スターをゼルウィガーが好演。だが、その当時の世界こそが抑圧の権化だったことを語るには状況は甘かった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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どうにも今の映画なら仕様がないことではあるのだろうが、ジュディの時代にしては弱者に優しすぎる演出が「世界の残酷」を描写する筆致が甘い。顕著なのはヒロインの大ファンであるゲイのカップルだ。彼らがあまりにも強く優しい存在として描かれ、ジュディを精神的に励ます存在となっているのにひっかかる。本人たちも告白しているように、この時代では同性愛者は犯罪者であったのがイギリス社会だった。そんなタイトロープを渡る存在には、概ね世界は萎縮しながら渡る場であったはずだ。その彼らがヒロインを励まし、あまつさえ観客に彼女を認めさせる原動力になってしまう。そんな人物がいなかったとは断言しないが、きわめて珍しい存在であったのは事実だろう。問題は、そんな描写が「媚び」の産物であろうことだ。それはこの映画に出る黒人男性がことごとく意志の強そうなイケメンとして描かれることからも知れる。ハリウッドの右顧左眄はこのところ珍しいものではないにせよ、そんな媚びが映画のメッセージを薄めてしまう短慮につながることを知れば冗談で済ます気にはなれない。金に萎縮して映画をスポイルする手法だ。弱者を立てるならそれにふさわしい作品で主張すべきで、それを見失うと差別排斥の主張こそが「ウザい」存在に見えてしまう。頭を使っていただきたい。

(評価:★3)

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