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[コメント] 静かな雨(2020/日)

何と太賀/衛藤美彩のふたりが初々しいことだろう。ただの難病映画と高をくくっていた自分を恥じる出来だ。ここに語られるのは反復の許容…ただの無意味が繰り返されることの許容、つまりは人生の許容だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







衛藤が毎日の新しい記憶を棄て、過去の記憶だけに生きねばならないことに太賀は慟哭し、煩悶する。だが、彼の気づくことは劣化しゆく恋人と毎日出会い、それがシーシュポスの神話になぞらえられるような無意味を体現するものであろうとも、愛情の本質と見極めることであることだ。この物語に安易な他者からの救済は訪れない。でんでんの教授が気づいたように、それが生きることの本質なのであり、無理に結論を出すまえに生活に意味を見出すことなのだ。

これは、多分おとなのための映画なのだろう。子供に有害なサムシングが含まれるということではなく、子供にはより新しく素晴らしいものを追い求める権利があり、それだけが全てでないことを知るのは老いを知ってからでも遅くないということだからだ。

カメラワークも素晴らしいものだったことも付け加えねばなるまい。その詩情とあたたかな抒情。善意の持ち主ながら弱さを否定することのできない人々を包み込む視点が素晴らしかった。

(評価:★5)

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