コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] キャッツ(2019/英=米)

地上でもっとも美しい動物とは、大多数の人間にとっては「ヒト」だろう。なぜならヒトはその骨格から決して逃れられないけれど、そのあくなき模倣能力によってほとんどの生物を模倣することができるのだから。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







CGで半裸の俳優たちのカラダに、動物の体毛を移植するという技術。この映画の魅力はヒットミュージカルの再現であるほかに、きっとそのアイディアにもあったのだろう。欧米の多くの評論家はその出来栄えを「ケモナー向けポルノ」「未知の新生物の誕生」と皮肉って忌み嫌ったと聞く。だが、そんな植毛のどこがいけないのだろう。「不気味」とも言われたそうだが、およそ史上トラウマになるような画像の半分は、きっと旧態依然としたファンに痛烈なインパクトを残した「新技術」なのだ。youtubeで観る予告編の映像は、映画の毛皮を着込んだような猫人たちよりもあきらかに美しい俳優たちの体躯を見せてくれる。それは着ぐるみ怪獣たちに等しい。着ぐるみ俳優はあからさまな人間の骨格を崩すことなく、その演技力のカバーでフィルム上に見たことのない生物の行動を焼きつける。できあがったのは新生物「怪獣」だ。そして新しい「美しさ」がこの世に生まれる。つくづく「こんな人間の真似事より『ライオンキング』よろしくCG処理された猫の活躍する映画にすべきだ」などというスカタンクレーマーの愚かしさを知る。美しいヒトの骨格で演じられる、ネコのような生物の乱舞。こんな美しい映像だけでミュージカル映画が作られ、それを観られる幸運を感じろ。無理なら『アバター』でも観てせいぜい喜んでいろ。これが不気味としか表現できない人は、たぶん絵画とか漫画に幼い頃から親しんでいない人なのだろう。そういう人を可哀想と突き放すほど傲慢ではないつもりだが、この映画の予告編を観て「コワイ」と泣き出す子供がおのれの子であるなら、俺は日本文化に触れてきた人間としてイビツに子を育ててきた自分を恥じるに違いない。

そんなわけで、この中身のないミュージカルの「不気味」映像はじつに楽しかった。いや、ミュージカルに深い内容など必要ない。肌に粟立つほどシビれたらそれでいいんだ。 最後のジュディ・デンチの説教さえなかったら完璧だったんだが。そういう理由で4点。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)月魚[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。