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[コメント] 愛がなんだ(2018/日)

愛に免疫のないヒロイン。周りの友人たちよりやめろと忠告され、他ならぬ相手から冷たく接されても愚直に恋人についてゆく。そんな彼女もさまざまな事件に遭遇し、立派におのれの信念をもって周囲に意見できるように成長した。だが、彼女の内面はラストで理解される。これはラブコメなどではなかったのだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







サイコホラーだったのだ。

恋する相手の幸福を喜び、我が事のように歓喜する状況は決して珍しいことではない。だがしかし、その程度の自己投影を超越するかのようにヒロインの愛情はピークに達していたのだ。

彼女は恋人と一心同体となるために彼の恋を賞讃する。そして彼が昔憧れた動物園の飼育係に就職する。

「でも、まだ私はマモルになってはいない」

愛の言葉は、このシーンをもって戦慄の色をまとう。彼になればヒロインは心変わりに傷つくこともなく、ただおのれの幸福だけを追求しても誰に恥じることもない。こうしてヒロインは自分の自由意思を捨て去って「彼」となった。究極の恋愛だ。あるいは異常心理の極北だ。

ヒロインは消滅し、もはや姿を現すこともない。この作品がヒロインの反乱に十分すぎるほどの長回しシーンを割り振っていたのは意味のないことではなかった。あれは燃え尽きる線香花火の最後の輝きだったのだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)死ぬまでシネマ[*] ぽんしゅう[*]

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