コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 犬猿(2017/日)

中途までは芸達者な4人の思いがけない勢いでフルスピードで盛り上がるのだが、喧嘩の果てにどうにもダレてしまい、「監督はほんとに考えて演出しているのか」が疑われる展開に直行するあたりで頭を傾げさせられる。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最後の兄弟、姉妹の大喧嘩でふいにぶつけあっていた罵詈雑言がフェードアウトし、劇半音楽にかき消されてしまうのはどういうことか。兄弟姉妹の根本にかかわる本音のぶつけ合いが聞かれるかと思っていたのに、ここが聞かせどころ、なんてことはなくただの普段の喧嘩の延長線上の闘いとして処理されてしまうのだ。

それだけではない。喧嘩が一段落し、兄姉の命にかかわる事件が連続するくだりでの演出はひどすぎる。兄姉にとりすがる弟妹の脳裏に浮かぶふたりの回想の子供時代、こいつは何だ。いまどきこんなぬるい演出は子供向けアニメでもなされることはないだろう。

それでも彼らの仲が修復されたかと見えたラストで、またもや一触即発に陥るステロタイプぶり。いや、当たり前の展開とて気の利いた会話でどうにでもなる。問題は再度2組が対立する理由のつまらなさだ。吉田恵輔は、結局のところ「根本的にはきょうだいの絆で結ばれた2組だが、そこは人間のおかしなところでくだらないことで対立してしまう」といったところを描きたかったのだろうが、だからといってこんな陳腐な会話で済ませては台無しだろう。これは未熟としか言いようがないし、もうちょっと練りようがあっただろう。兄弟の不和なら、例えば『男たちのかいた絵』なんかが参考になるだろうが、このプロットでも見せ場は作れただろうことが残念。

新井浩文江上敬子は好演。最後まで興味を持続させられた功労者ではある。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。