[コメント] サウルの息子(2015/ハンガリー)
正方形にちかい狭苦しいスクリーンに投影される、これも視野狭窄的な一個人のドラマ。サウルをひたすらに追い続けるカメラは、外側にぼやける惨たらしい光景すらも「我関せず」と見過ごして恥じない。得てして大き過ぎるスケールの惨劇に投入された者は、悪への憎悪や正義の希求ではなくこんな些事にちぢこまる方を選ぶものだ。彼の思いの深さは、それが示されたのちに十分に語られる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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そんな矮小なサウルは、どんな局面においても仏頂面を崩さず、自らの価値観に生きる寡黙な小人だが、そんな彼が最後に息子の生まれ変わりのような少年の出現に立ち会い、浮かべる笑顔は忘れがたい。この表情が彼という人間の価値観を物語り、同時にこの男を語るべき普遍的な世界においての価値をも提示する。これは反ファシズム映画、反戦映画といったレッテル貼りを拒絶する愛情の映画だ。
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