普通ではない人々が群れ集い、普通ではない行動を繰り返す度合いは健在だが、この時点で乗れない人はきっと最後まで乗れないかもしれない。でも、この普通でない人々も我々と同じく懊悩することをカリカチュアライズして描いているに過ぎないことを知れば、物語が俄然身近なものになってくるのはいつもの三木作品と同じだ。

「水道の蛇口をひね」ったまま外出し、風呂桶が一杯になるまでに昼食をかっ込む。これは三木ないしスタッフの誰かが、少年時に実行していたことに相違あるまい。こうしたネタも、ツタンカーメン王の相性占い機も妙に「これ、昔あったよなぁ」というようなリアリティがあり、でも三木以外の誰しもが今まで引っ張ってこなかった新鮮さが感じられる。こうした既視感ギャグも三木の腕にかかればマンネリ感は皆無だ。そして、もうひとつの理由がある。

これはヒロイン･ハナメが他のキャラクター達より格段に大きな存在感を持っているからに他ならないだろう。麻生久美子のハナメには満足している。彼女といえば、一時期はあんこがもちの三倍はついているようなあんころもちの如き激甘感涙映画のヒロインだったが、彼女は意識をしっかり持って可能性を広げている。麻生の勘はコメディエンヌとしても天才的である。是非、一つのジャンルに閉じこもった永遠のお姫様として終わらず、大きな成長を遂げて欲しいものである。

余談ながら、「死んだ振りするの止めなさいよ」は大好きなギャグ。