[コメント] パッチギ!(2004/日)
井筒監督得意の凄絶な抗争のなかに、ひっそりと咲く花、沢尻エリカ。彼女への脆弱軟派な少年の思いは、青春の一時期なればこそほんの僅かの間大きく花開き、闘いのエネルギーを凌駕する。ピュアな思いが総てに増して輝く奇跡の季節をわれわれは目にすることができた。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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暴力は何事も解決しないという俗論は嘘である。その証拠は、そこらへんに転がっている歴史書をひもとけばいくつでも挙げられる。この映画のなかでも、若さと馬鹿さに背中を押された少年たちが毎朝毎夜、喧嘩を繰り広げている。
だが、終始弱虫のコバンザメだった主人公の歌は、この時期だからこそ頭突きに匹敵する破壊力を得ることができた。喧嘩にも、ふたつの国に横たわる大きな不信の念にも勝ち得る情念の力だ。事実、井筒監督の得意とする乱闘シーンは、大きな魅力をもって観客の燻る不満感を吹き飛ばしてくれるのだが、放送自粛歌「イムジン河」を泣きそうに歌う主人公の声こそが、この映画の総てにピリオドを打つような爽快感をもたらしてくれるのだ。憎みきれない有象無象のキャラクターのドラマも、その曲に乗って収束してゆく畳み掛けは心底鳥肌が立った。
これは二国間のドラマに収まらない、青春の底知れぬパワーを語る映画だ。
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