コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 血と骨(2004/日)

マーロン・ブランドのビトー・コルレオーネは立派にある時代のアメリカにおけるイタリア人の父を代弁できたが、ビートたけしの金俊平は日本における朝鮮人の父でもなんでもない。あれはただの暴力とセックスだけでしか自己を主張できない孤独な男だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







不器用な役者であるたけしが、欲望に忠実なただの乱暴者を演じるとき、そこにいるのは年齢に合わせてメイクアップしたビートたけしその人でしかない。このことが、この映画においての主人公の存在感を失わせている。

怒りに任せて家中の家具や窓を叩き割り、情欲に任せて白昼堂々女を激しく弄ぶ。そのシーン以外ではきわめて存在感の薄い金は、主人公でありながらそこに生きている実感が感じられない。唯一彼の存在を際立たせるのは廃人となった愛人へのいたわりだが、それだけだ。金は見事な成功を収めるどころか、生きているうちに欲の皮が突っ張っただけの弱弱しい老人へと凋落し、最期は誰にも看取られずに死んでゆく。この老人を崔洋一が敢えて映画に描こうとした理由が自分にはどうも掴みかねる。母国の血をひくことだけが同じである、ただの性格破綻者ではないか。

この物語からは自分は負の感動すらも感じとれなかった。彼はろくでもない男、それ以外の何の属性も持たない卑小な存在だ。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)寒山拾得[*] jollyjoker ハム[*] ユウジ トシ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。