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[コメント] ガルフォース(1986/日)

愛すべき80年代アナログSFアニメの残滓。それは雑な絵であり、必要以上に頻出するお色気とメカアクションであり、少女たちにさえ襲い掛かる残酷な現実の軋轢である。(2006/4/12再見)
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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確かにこの作品を観た筈だったのだが、ロリコン・ブーム当時の数多の少女戦闘ものに紛れて忘れてしまっていた。覚えていたのは園田健一の筆になる健康的な女の子キャラと、エンディングの小比類巻かほるの「両手いっぱいのジョニー」なるナンバーだけである。園田の絵は好きだし、洗練されたSFアクションの一本だったように覚えていたので、もう一度観る機会をずっと待っていて、今回この世界と再会したというわけだ。

そして気づいたことは、思ったより絵が汚いこと。園田のキャラデザインに似ているカットを捜すほうが難しいくらいだ。そして意味のないシャワーシーン、水浴シーンが頻出する。なおかつ、ミサイルと光線砲と爆発のシーンが横溢している。それぞれが80年代のアニメファンに喜ばれたものだが、今観るとクサいのなんの。およそ洗練などという言葉とは無縁な作品であることを認識させられた。

しかし、この作品が嫌いかと問われればそうでもなかったりする。何よりここには、80年代アニメの荒削りなパワーがぎゅうぎゅうに詰まっているのだ。それは伝え聞くアメリカSFのスペースオペラ勃興期のようなエネルギーだ。ご都合主義上等。エログロナンセンス大いに歓迎。その「お客様はお馬鹿さんです」式通俗趣味の裏には、SFファンたるスタッフが描きたくてたまらなかったプリミティヴなSFのエッセンスが詰まっているのだ。男と女の宇宙を二分する永劫の戦いなんてのは今観れば陳腐の極みだが、『超時空要塞マクロス』などにも繋がる「SF者には一度はやってみたいテーマ」だ。それはこの作品でもあくまで大真面目に語られている。可愛い女の子が次々に死んでゆく残酷なプロットのなかで、それは充分に生かされていた。言ってみれば、宮崎駿を礼賛する親御さんが眉をひそめ、若い元気なアニメファンが親に隠れて熱狂した、そんな今では珍しいくらいにエネルギッシュな作品だったわけだ。

今の通俗アニメは絵は素敵に綺麗だし文学的な匂いすら漂わせてはいるが、こうした破天荒な馬鹿力にはどうも欠けるように思う。かと言って、それを責めるのはお門違いだろう。アニメはもはや日本の世界に誇る大衆芸術なのだから、成熟の期はもうとっくに迎えている。でも、時にはこういうエネルギーだけで一本作っちゃいました、というような作品を自分は観たくなる。誰か作ってくれないかな。

(評価:★4)

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