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水那岐さんのコメント: 投票数順

★3オマールの壁(2013/パレスチナ)荒削りでストレートな作劇の裏には、信念を持ち疑わない演出者の意地こそが認められるだろう。多分にハードな筆致の度が過ぎ、事前知識なきものの理解を妨げる演出ではあるが、おそらくは捻じ曲がっていた物語を、一撃のもとに分断するラストの爽快さはこのためだ。娯楽フィルムならば伍する存在は山ほどあるけれども。[投票]
★4偉大なるマルグリット(2015/仏)前半のコメディになってゆくかと曲解させる案内役たちの眼とは裏腹に、正統派の愛の悲劇に集約されてゆく後半は飽きさせない。たぶん多くを望み過ぎた演出家の責であろう。黒人執事の冷徹な細工と、夫の凡庸な普通人らしい愛情だけに絞り込めばそれでよい。第三者はヒロインを愛さないただの「人生の通行人」であれば十分なのだ。[投票]
★5パパが遺した物語(2015/米=伊)甘く薫るポップス『Close to You(男声版)』の功罪。盲愛の果てに愛娘を確実に破滅させる、とんでもない馬鹿親のテーマソングだ。だが、そういうラッセル・クロウにこの上ない共感を覚えさせられた自分だからこそ、とてもこの物語を他人事として断罪することはできないのだ。この作品、邦題から想像される甘いホームドラマではない。…冷笑覚悟で高得点を授ける。 [review][投票]
★3orange オレンジ(2015/日)開始早々にヒーローの死が提示され、彼を救うためにパラレルワールドを作り出すためのストーリーだと語られる。それを可能にするのが未来からの手紙に従うこと。えらくつまんない話じゃないかと呆れ返るが、物語は予測できない反応に翻弄され、命令に背くことの意義も生じてくる。きちんと物語を考えていることは評価。『地下鉄に乗って』の酷さはない。[投票]
★3幌馬車は行く(1960/日)当時の西部劇ブームに乗り、急遽低予算で作り上げたお手軽ウェスタン。立山の高原ロケにより雄大な風景と馬上のキャラによる銃撃戦は撮り上げたが、人間ドラマのお粗末さは事情を語って黙ることがない。結局は赤木圭一郎鑑賞のための一本に収まった。[投票]
★2ひそひそ星(2016/日)手段としてのSFを嫌っていては映画など観られないが、問題はそんなことじゃない。自分が嫌悪するのはリアルな世界を批評するために、実在の風景とそのなかにある個々の人間の営みをいじることの犯罪性だ。 [review][投票]
★2黄金の野郎ども(1967/日)「ハードボイルドの教科書」をよく読んで応用した作品とでもいうのか、女は平和ボケの馬鹿揃いで、男は徹底的に無口なカッコつけに終始する行動パターン。裕次郎の、仲間に辛くあたって敵を増やす行動スタイルもどうにも腑に落ちない。零落に向かう日活アクションの断末魔か。敵に徹する宍戸錠は唯一ハードボイルドを実践している。[投票]
★3散弾銃の男(1961/日)むしろ二谷より小林旭主演が似合いそうな股旅ガンマン西部劇だが、鈴木清順演出のアクはこの時点でべっとり画面に張り付いている。二谷と南田が、会話で情を交わし合う中央をすり抜けて画面奥のアコーディオン親父の演奏に行き着くなど、カメラ芸の楽しさは十分味わえる。ガンファイトを終始アップを廃して撮るのもそれらしい。[投票]
★3ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール(2014/英)ミュージカル好きの意味合いから観たが、こういう好いた惚れたの事件を感情移入しながら鑑賞するには俺は年を取り過ぎたようで、いささかの敗北感をもって作品後半を眺めていた。純粋なミュージカルとしては近年ではあまりなかった本格派であり、全編をいろどる甘酸っぱいソフトロックはなかなかに心地よかった。[投票]
★3アスファルト(2015/仏)いかにも仏流の皮肉たっぷりなシチュエーションを扱いながら、次第に心優しい視点にいつの間にか転じている演出法のテクニックはよい。だが、詩情やエスプリは感じられても物語がそこで停滞しているように見えてしまうのは残念。いっそシニックなのか否かに作劇を絞ったほうがすんなり受け入れられたように思われさえする。 [review][投票]
★3機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜(2016/日)安彦良和、老いたか。 [review][投票]
★4私の、息子(2013/ルーマニア)素っ気ないドキュメントスタイルのカメラが捉える主眼として認められるのは、奮闘を重ねる母親ではなくむしろどうしようもない息子である。この男を口を極めて罵倒し、あるいは叱咤するのは容易であろうが、周囲の人間の助言を無視して「赤子」がみずから動いた結果を見誤っては仕方ないだろう。男にとっての精一杯の行動を見定める物語にして、この方法論は正しかった。 [review][投票]
★4あの日のように抱きしめて(2014/独)愛情はヒューマニズムだけに裏打ちされるモノとは限らないし、あるいは唾棄すべきエゴイズムに形作られたモノでありながら立派に成り立った愛情もある。それが成熟した感情だ。これは誰が最悪な人物かを名指しするゲーム映画ではなく、ただ愚直な愛情を浮き彫りにする素朴な経緯を描くものだ。全編を貫く「スピーク・ロウ」の旋律がほろ苦い。[投票]
★2ストックホルムでワルツを(2013/スウェーデン)最後に待っているのは『オール・ザット・ジャズ』みたいなエンディングかな、と一回は思う。そういう終幕も今は珍しくないが、納得はする。しかし対応は見事に裏切られた。ここまで安易なエンディングは、映画誕生以来のカビの生えた展開はもう清々しいばかりだ、などと呑気にかまえる気力すらない。ジャズナンバーの素敵さには1点オマケに与えておくにしてもだ。[投票]
★3人生スイッチ(2014/アルゼンチン=スペイン)コントのオムニバスと判断していたので、日本演芸的なハッキリしたオチを期待してしまい肩透かしを食らった。ブラックユーモア風の1と3はともかく、あとはもう少しヒネリが欲しかったのは所詮ないものねだりだろうか。そして3は『激突!』の劣化版としか見えないあたりがかなり残念。「感動のラスト」なんて情報を信じてガックリきた俺としては、事前情報など百害あるのみと認識し直した。[投票]
★3ティエリー・トグルドーの憂鬱(2015/仏)淡々と、しかし主人公に焦点を定めて執拗に追ってゆく手持ちカメラは、最低に呪わしい現実をなぞってゆく。描くのは愛深き男の、愛なき冷酷な使命のゆくえだ。 [review][投票]
★2セデック・バレ 第二部 虹の橋(2011/台湾)わりに蛇足的内容。セデック族の末路は縁深き方々の血涙を絞る悲劇の連続だが、抗争の果てるまでを即物的に描く本編があらずとも、物語は第一部に30分を付け足せば事足りる顛末の描写でおさまっているのだ。 [review][投票]
★3セデック・バレ 第一部 太陽旗(2011/台湾)これが「反日映画」であるか否かと頭を巡らすことほど愚かなことはない。昔人の言葉にもある「偏見は楽しい、だが無知は楽しくない」との認識に従えば、ここから蒙を啓かれて台湾史の知識を得るのが鑑賞の価値そのものであるからだ。その知識が偏見に満ち満ちているかは二義的なことだろう。 [review][投票]
★5彼は秘密の女ともだち(2014/仏)フランソワ・オゾンの愛すべき中編にして平明を極めるウェル・メイド・フィルム。誰しもが一度の人生において享受すべき権利を語る。 [review][投票]
★4ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ(2015/英)友であり、読者であり、導師でもある男。そんな人物が仕事仲間となってくれるのならば、これ以上の贅沢は罪悪とイコールでつながれるだろう。彼はつねに帽子をかぶり己の本心を包み隠すが、友との関係を総括する、まさにその時感情を露わにする姿は胸を打つ。センチメンタルな視聴後観を許す要因ともなる、くすんだセピアの画面は独自性をもちはしなくとも抒情的だ。それは悲劇をも甘美に彩る。[投票]