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水那岐さんのコメント: 更新順

★3イロイロ ぬくもりの記憶(2013/シンガポール)さすがに才気は香らせるものの、少年、母、父、メイドのいずれに物語の秤が傾くかが前半ははっきりせず、概して荒削りな印象は否めない混迷具合だった。後半において少年とメイドの接近が核を成すに至ればこれは成熟に至ったとみられ、アンソニー・チェンの手腕は明らかとなる。この勢いが全般に亘るものであってほしかった。[投票]
★3ザ・ホワイトタイガー(2021/インド)日本人にはいにしえの通俗映画のようにしかみえない、言ってみればアナクロな出世物語だが、我々が恵まれすぎているだけなのか、インドではこの筋立てが共感を呼ぶのだろう。恵まれた生活を拒絶し、従属することを生き甲斐にできる人々には、必ずしも幸福をもたらすとは限らない民主主義は唾棄すべき思想なのかもしれない。意識の断絶を肌で感じる。[投票(1)]
★3バーニング・ゴースト(2019/仏)かなり古風なメロドラマだが、主人公と恋人の関係はロマンティックな劇半音楽に支えられ、確かに胸をうつ。残念なのはそれ以前にこの作品における幽霊のルールが曖昧であり、どういった法則に縛られるのかが終わり近くまで説明されない点だ。特撮を使うシーンは「ここぞ」というポイントのみで、それはむしろあざとさを感じさせず好ましい。[投票]
★3ラジオ・コバニ(2016/オランダ)凄惨なテロルに晒された街で、ラジオを始める女性。家族の無残な死骸を見つめる子供も、またスポーツの輪のなかに戻ってゆく。それは強いのか、鈍感になったのか。でもやはり、ひとつところに立ち止まってはいられない。残酷に足首を掴まれてたまるかと娘は花嫁衣装をまとうのだ。日常への慈しみを取り戻さんと。[投票]
★3ロバマン(2019/日)内容はないに等しいが、笑福亭鶴光(ニッポン放送)VS吉田照美(文化放送)に加勢の伊東四朗が現われるという、往年のラジオリスナーにとっては夢の対決に聞き惚れた。みんな老いてしまったがトーク力は健在だ。ここはTBSのDJも現われてほしいという切なる願いがある。[投票]
★3夕方のおともだち(2021/日)目を背けたくなる痛いシーンもありながら、主人公を見つめる監督の視点は「変質者」と嗤う上から目線ではなく、一貫してあたたかい。また、主人公の生き甲斐を直視しカタチにするまではいかなかったが、その生き辛さを見つめ、未来を信じさせるエンディングゆえ許せる。テーマの語り足りぬ部分は多々あるが。[投票]
★4カランコエの花(2016/日)では、どうすればいいのか。判るワケがない、俺だって判らない。いまどれだけの日本人が理路整然と正論を語れるものか。この映画にも答えはない。だが、答えは出されねばならないのだ。今、正論が説かれてもそれは一笑に付されるだろう。だからこれは問いかけだけなのだ。時代の映画として悔やまれるが、今はそれ以上を語っても嘘になるのだ。[投票]
★4その日、カレーライスができるまで(2021/日)雨の夜は世界を孤立させたカタチで切り取る。ラジオで調子よく喋っているDJを軸として、その周りに存在する男と女がドーム内に幽閉されているような焦燥。でも、薄日が差せばふたりの周りにはきちんとした生きる空間が甦っているのだ。「3日目のカレー」が、現実の意味を帯びて必要以上に旨そうに見える所以だ。 [review][投票(1)]
★1コルボッコロ(2019/日)とりあえず監督はアニメ以外の映画を沢山観てほしい。そして作劇法の何たるかを充分に学んで、それから第一歩からやり直すべきだ。この物語には道理も考えさせる問題もありはしない。ただ若者の反逆とか、エコの大切さとかの判りやすい問題提起に、グロテスクで行き当たりばったりな尾ひれがついただけだ。キャラのアクションに語らせず、全てを主人公の台詞で説明する愚。[投票]
★3西部戦線異状なし(2022/独)厭戦映画としては成功しているだろう。自分は心に波立つ場面を丁寧に取り除かれ、ただ陰鬱で不快な死と諦念の支配する画面を眺めながら、ひたすら映画が終わるのを待っていた。流血や昏倒が重なる場面にも食傷した自分の不感症的な目は、お偉方のいい気な苦悩の場面に切り替わるのを待っていた。泥に塗れる死体なんて誰も見たくないんだ。[投票(1)]
★2イノセント15(2016/日)イノセントなふたりは、無垢であり同時に無知、すなわち馬鹿である。そんなふたりは不幸のどん底にいるようだ、くらいに現状を顧みるが、結局何をすればいいのかまるで判らず、ベターに思える冒険に出、そのたびに痛い目にあって挫折する。ふたりは永遠にメディアの誰かの物真似をしつづける。「馬鹿の悲しさ」の映画だ。[投票]
★3すすめ、カロリーナ。(2018/日)主人公の棋士と同じポーランド出身の動画家が監督を務める。若者の自信を、また葛藤、奮起を表すアイテムとしてコマが行動のたびに生まれ、散らばり、また騎士へと姿を変えて同行する。だが、あくまで主人公の行動はさりげなく、彼女へのエールもまたさりげない。東欧の空気ただようくどさのない演出が清々しい。[投票]
★1あした世界が終わるとしても(2019/日)のどかで牧歌的な、まるでクソゲーのように呑気に演じられる命のやり取りと二国間戦争。さすがに俺もブチ切れた。殺し合いは極めて世界の大衆には縁のないように秘密裡におこなわれ、最初のうちはパニックに陥っていた関係者が色恋ばなしに興じる最強無責任バトルの顛末。まして子供じみた脚本には欠片ほども説得力はない。少女キャラは非常に可愛いので、スタッフ一同はエロアニメに職種変更することをテキトーにお薦めしておく。[投票]
★2まほろ駅前多田便利軒(2011/日)まほろ=わが町田市ではないにしろ、街の実像がわざとぼやかされており、そこに生きる人々の性格も意図的に曖昧にされ実像の提示を拒絶させられている。強引にでも町田市でまとめれば、単に諦念に律されるような無個性さというステロタイプを逃れ得たのではないか。松田龍平の厭らしさも街と同じく個性を戯画に貶められているためと見える。[投票(1)]
★2あのこは貴族(2020/日)フェミニストの巧妙な教科書。これって門脇麦が生まれる世界を間違えた、ワーキングウーマン向きの女ってだけじゃないのか。貴族社会でしか生きられない人間だっているわけで、そういう人間に羨望の眼で仰ぎ見て貰おうっていう逆差別の物語に見えた。劇映画としては綺麗でカメラはいい仕事をしているが、メッセージとしては一方的で狡猾。[投票]
★4ちひろさん(2023/日)サイドカーに犬』みたいだったら嫌だと思ったら、スーパーウーマンの話ではなかった。孤独が好きだけれど、同類の人間とはちょっと絡みたいな、と気まぐれを起こす猫みたいな女の子の話。そう思ったら、少しは好きになれたようだ。 [review][投票(1)]
★4聴こえてる、ふりをしただけ(2012/日)苦手に感じざるを得ないのは、自分もまた片親を幼時に失った子供であり、荒れて自分から周りの友情を断ち切って独りになっていった記憶をもつからだろう。ヒロインの行動は苦しくて直視するのがつらい。でも、こういう子が周囲を見つめ直し、人間の繋がりを保とうと努力する姿は素直に嬉しい。自分なら父親のように破滅してゆきそうで、他人事とは思えない。[投票]
★3わたしたちの宣戦布告(2011/仏)徹底したエピキュリアンでエゴイストの夫婦の我が子闘病記。ここまで自分を見失わず、我が子を愛しながら遊び人を貫くならむしろ清々しい。「我が子が障碍者でチビでゲイで黒人になったらやだなあ」なんて暴言を吐けるのはフランス人をおいて他になかろう。傷を負う前に自分で自分に傷を負わせるような徹底した覚悟の賜物だ。[投票]
★3安重根と伊藤博文(1979/朝鮮民主主義人民共和国)判ったことは、安重根なる人物は朝鮮の大石内蔵助に過ぎないということ。一人一殺のテロリズムが歴史を変えるような時代はとうに終わっているというのに、彼という御輿を担ぎ出さねばならないのは、やはり国民受けする「義士」だからだ。 [review][投票]
★3好きになるその瞬間を。 告白実行委員会(2016/日)他人事として対応しているので、前回ほど素直でないヒネクレ男女の恋の顛末は胸キュン状態で見ることもできずイライラする。とはいえおっさんに胸キュンできる繊細な神経など残っている筈もないのだが。まあ異世界冒険のお粗末。[投票]