「金とスポットライトが全て」の街を健気に生きのびようとする女の強さ、哀切？ シカゴ（都会）という偏狭な世界と価値観しか知らない、知ろうともしない女たちがお股おっ広げて粋がっても哀れにしか見えない。

これは、そういう映画じゃない？　だってミュージカルなんだから？

俺の知る限り、ミュージカルの傑作は音楽と映像とそれにも負けない物語を以て、こっちの価値観を揺さぶってくれる代物だった。『サウンド・オブ・ミュージック』然り、『ブルース・ブラザーズ』然り。後者に至っては、ソウル、Ｒ＆Ｂ、Ｒ＆Ｒと根幹から絡み合った映像がもっと強烈な衝動を喚起してくれる。

映像と音楽の映画的コラボレーションが、この映画のどこに観られたというのか？ いちいちブツ切られ、本編から完全に隔離されるミュージカル・シーンとそのセットは、単に舞台を適当にスクリーンに収めようとしていただけ。本編に関しても、本気で当時の空気を再現しようという意気込みは見えなかった。ブロードウェイの録画が観たくて映画館に足を運ぶわけじゃない。何が何でもアリだ。何もねえじゃねえか。