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[コメント] バリー・リンドン(1975/米)

今回もK点越えなるか。スタートはいいぞ? ジャンプもいい! もってこい、もってこい。ああ! …落ちた。とどきませ〜ん! …後半、ちょっと体勢を崩したか。テルマークだけは決めてきました。
kiona

 キューブリックのブラックユーモア、おそらく人間観であり人生観であると思われる、悲惨で残酷な喜劇というのは、役者と監督の間の異常に離れた距離によって生まれる。カメラが寄っていようが引いていようが、あまり関係ない。役者には役どころに対し完全に感情移入するよう促しているはずなのに、それを見つめるキューブリックの視線がやけに冷たいが故に生まれるテイスト。それをもって、キューブリック作品は娯楽作品的な観客の感情移入を拒絶し、アートたりえているのだと思う。

 前半は、ちゃんとそのセオリー通りに撮っていた。ところが後半は、主人公に同化しながら撮っちゃっている。おそらく主人公が魅力的過ぎたのだと思う。少なくとも私は感情移入せずにいられなかった。「お前だけは、人生単位で逃げ切ってくれ!」そう思えた。

 過酷な現実を偉大なほどの凡庸さでするすると逃れていく主人公。まるでボブ・ディランのように素敵だった。キューブリックも彼を逃がしてやりたかったのではないか。とはいえ原作があって撮っている作品だから、まさか覆すわけにはいかない。テルマークを決めながらランディングするしかなかったのだと解釈することにしている。

 愛すべき失敗作!

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)週一本 きわ[*] おーい粗茶[*] トシ[*] ロボトミー[*] tat tkcrows

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