大河原監督は『誘拐』を見る限り駄目な監督ではないと思うのだけれども、ゴジラ作品に工夫が感じられないのは、何の限界だったのか。三村さんがラドンとベビーに込めようとした“生命力”というテーマは、当時の依然としてきぐるみに頼った特撮にはかなり厳しいものがあったのだろうし、できた事と言えば、せいぜい原色のアニメ光線だけだった。本編つまりは人間ドラマの積極的な介入とカバーが求められた。

　とはいえ初期設定にも、そこかしこに無理があった。“メカゴジラを製造する”というのは動かしようのない企画の前提だとしても、恐竜ボーイは結構きつい、こっぱずかしい。佐野量子が脚本の意図した通り健気に見えたことは、大きな救いだったけれども、作品を救うほどではなかった。

　テーマが間違ってたとは思わない。伊福部先生の音楽をドラマに絡ませるアイデアは買うし、そのテーマである”生命力”というのは面倒だけれども確かにこの時代のゴジラが通るべき道だったのかもしれない。その相手に、メカゴジラは適役だったとも言える。ラストシーンも含めて、断片的には成功する要素を孕んでいたのかもしれない。