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[コメント] 竜とそばかすの姫(2021/日)

癒えるんですか? 残るんですか?
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







雨の河原で増水してたら川岸にいたって十分危ないわけで、実際娘も母親を追いかけようとする。なんぼ放っておけなくても、自分の娘置いていくか? というこのくだりからして、テーマを問う以前にシチュエーション作りがうまくいってないと思う。悲劇のとっかかり、孤独の過去設定という意図だけが見え透いて、細部はどこも粗雑だ。終盤は特にひどく、どーして一人で行かせるか? 問題には、啞然とさせられる。何しろ彼氏もババアどもも、この転んでほしいところで転ぶとろい少女がサイコDVオヤジの魔窟に乗り込むと知りながら、それを彼女の父親に隠ぺいするのである。こんなもんふつうの父親だったら、ぶちきれるくだりだろう。俺だったら「何でうちの娘、ひとりで行かせんだ、この糞戯けども!」とアトミックブレスを吐きかけるところだが、このとろいオヤジは真相を知らされず、お気楽にメールでやり取りするばかりで、カツオのことしか気にしてない。すべてが、こういうシチュエーションを作りたいというご都合の代償なのだ。それでフィーチャリングされるこの少女像もなあ、結局はお歌の才能があり、結局は理解してくれる周囲や仲間がおってなかなかにリア充で、まあまあソバカスなんて気にしなくていいぐらいにブスでもデブでもないと思うと、何だぜんぶ八百長じゃねえかと思えてしまう。アンヴェイルされたとき、もしその声がただ竜にだけ届けばよかったのであれば、彼女の唄はうまい必要などなく、それこそ沈下橋でゲロ吐いたときのアレの方が竜には届いたと思うのだ。そうしないのは、結局のところ承認されたいからなのでは? のど自慢に出てくる子たちなんか、もっとどれだけ堂々と世間と渡り合っているかという話だ。結局は、作家の視点の問題だと思うのだ。まったく関係ないけどたまたま次女と見ているので引き合いに出すと、たとえば『呪術廻戦』なんかは(まあいろいろ問題も多いですねえと思いながらも)まだ学生たちからそう遠くかけ離れていない作家の同年代的怨嗟が(是が非か以前に)胸に迫ってくる瞬間がある。そこへいくと、細田さんは蓮池のほとりから眺めてらっしゃるんだと思う。事が済めば、ふらふらと行ってしまわれる感じに見受けられるんですが、ひとつ聞きたい。彼女の頬の傷は癒えるんですか、残るんですか?

(評価:★2)

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