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[コメント] マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016/米)

取り返しがつかない現世こそ地獄。簡単には変われない。腫れたきり元に戻らぬ、腫物そのものと化した己を引きずり、それでも人生は続いていく。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







酔っぱらった不注意で自分の子供を焼き殺したら、うちの嫁許してくれるだろうかと思ったら血の気が引く。オナカが痛くなる。こんなん書くのさえ縁起でもない。「地獄の業火で焼かれるがいい!」ばりのこと言われて、二度と会ってもらえんと思う。主人公もその節はそうだったんだろう。人間失格のゴールド免許更新で、民度の低いボストンの民度の低い汚水にまみれるぐらいしかすべがなかったのだろうと思うし、延々と引きずって生きていくしかないのである。そこへもってきて、赤ん坊連れた嫁との邂逅は地獄のピークというか、もう閻魔大王の裁きに等しい最悪のイベント発生だ。ああ、このシーンのやりきれない断絶。なんぼ優しい声をかけられたって、そんなもん救われない。「許す」なんて言葉は一番聞きたくなかった言葉だ。なぜなら許されないに決まっているからだ。実際に嫁も事が起きた当時は「地獄の業火で焼かれるがいい!」と言っていたはずで、それだけが唯一無二の真実だからだ。にもかかわらずここに来て「許す」と言ってくれるのは、嫁自身が先に行かなければならない、新たな子供を育てていくにあたって過去に区切りをつけなければならないからだ。でも新しい旦那がご機嫌かと言ったらそんなうまくもこの世の構造はできていなくて、区切りをつけようとしながら未練をちらつかすようなことを言ってきたら、もうCPUが追い付かない。またもバーで暴れて人間失格アップデートするしかないだろうと思う。

けれども、それでもあなたに寄り添おうとする誰かがおりますよ〜

というのを、何の恩着せがましさもなく訥々と物語る演出はひとつも間違っていないんだけど、その間違わない感じが好きかと言われたらそうでもなかったりする。。

(評価:★3)

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