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[コメント] コンテイジョン(2011/米)

うらあ娘のためじゃー!ギュワーンキキキー、ダンダンダンドカン!獲ったどー、ワクチン獲ってきたどーブチュウ全快!みたいなアレはやっちゃいけないご時勢の、ウイルスもの。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アウトブレイク』が、今や15年以上前。そのページ見たら自分、2点つけていたんだけど、ごめんなさい、嘘ついてました。観たときはけっこう面白かった印象です。空気感染するウイルス視点のカメラワークとかあって、ガハハ、監督誰かと思ったらヴォルフガング・ペーターゼンでしたよ、ブハハ、ぜんぶ納得。

先日、娘のためにドラえもんを借りてみたんですが、それも『アウトブレイク』と同じ頃に作られた映画で、子供のによく目にした空を車が飛んでいるようなピッカリーンな未来が舞台だったんです。で、その未来、西暦何年て設定だったと思います? 2011年だったんですよ! はあ…

バブル時代に育った私たちの誰が、こんな貧乏で貧相で貧弱な未来と自分を想像していたかって話です。今は、世界を水浸しにするだけで終わりかねないヴォルフガング・ペーターゼンなんかは映画を撮らせてもらえない、逆にチェ・ゲバラなんて今さらなもん撮ってるスティーブン・ソダーバーグみたいな人がウイルス・パニックものをやらされる、しかも安くあげろとケツを叩かれる時代です。いや、後者は言い過ぎかもしれません。

でもこの映画、今の空気を撮っていると言うか、別に作家がどうこうではなく映画そのものが自然にその時代になっていると言うか、それ以外になりえないと言うか、それが『アウトブレイク』の記憶と比較するとよく解ると言うか。

以前のわたくし、『アウトブレイク』が奥さん助けたことに文句を言っていたんですが、この『コンテイジョン』は奥さん助けられないところから始まるって言う。演出は基本的に『トラフィック』辺りから変わらない群像劇のそれで、よく言えば交通整理がうまい、悪く言えば忙しなく人物が行きかうだけのどうも奥行きが無いアレなんですが、デイモン・パパの描写なんかを見るにつけ、今回は行動、心理ともにとても丁寧で共感できるもので、良い映画なんだと思いました。そりゃあね、ギュワンとアクセルふんで検問突破とか出来ないよね。なんで出来ないかと言われれば、俺はスタローンじゃないからだ。スタローンだったら検問突破できちゃうだろうけど、俺は多分パーカーまけないからそんな危険に娘をさらす訳にはいかない。この映画が根ざしているのは、そういう普通の人々が許されている選択肢の範囲で行う算段と決断だ。ワクチンで助かるのは もう運が良かったからでしかなくて、ありがたやありがたやとお上に感謝して、犠牲者にはナムナム合掌する他ない。うらあ娘のためじゃー!ギュワーンキキキー、ダンダンダンドカン!獲ったどー、ワクチン獲ってきたどーブチュウ全快! みたいなカタルシスのご用意は、当映画には一切ございません。て言うか、やっちゃいけない空気の中で撮られているから、見応えがあって、でも、何か寂しい。

アウトブレイク』に文句言って本当わるかった。今や奥さん助かって万歳みたいな、あの時代が懐かしい。もう戻れないんだと思うと…

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)緑雨[*] 死ぬまでシネマ[*] けにろん[*] Orpheus

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