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[コメント] 風の谷のナウシカ(1984/日)

古さを感じさせない世界観は圧倒的! 圧倒的に美しく、流れる風のよう! だが、宮崎駿の自然謳歌に対しては、いつでもささくれのように違和感が残ってしまう。(2008.10.13.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







腐海は人々に恐れられる場所だが、画面に映し出されたその景色は実に美しい。流砂から落ちて辿り着いた地下に隠れる汚染されていない空間もまた美しく、癒しを感じさせてくれる。オームはダンゴムシのような可愛らしさを持ちつつ、重厚な戦車のような迫力もある。青い空を軽妙に飛び回るナウシカの姿は、まるで鳥のようであり爽快感の結晶である。

風の谷のナウシカ』という映画は、アニメーションだからこその“自由”を最大限生かした作品に思える。実写ではできなそうな、流れるような映像はスーッと心に沁みこんでくる。この世界観は唯一無二のものだ。

だが、僕は宮崎駿が自然謳歌を奏でると、どうしても素直に受け止めることができないのだ。中盤までは最高のエンターテイメント大作だったのに、終盤に行くにしたがい自然謳歌を説教のように続けていた『天空の城ラピュタ』と比較すると、こちらは全体的な構成はしっかりしているとは思う。空中戦であったり、オームの大群が攻めてくるなど、クライマックスに行くにつれてアクションのボルテージは上がっていく。自然と環境を訴えるメッセージも、物語が進む過程でバランス良く盛り込まれている印象だ。

それでもなぜ自然謳歌が気に入らないかというと、キャラクターという個よりも、自然という全体に焦点が行き過ぎてしまうからだ。ナウシカの人物的な背景は、隠していたオームの幼体を大人たちに取り上げられた幼い頃の回想くらいしか登場せず、他人との関係によって浮き出てくる個の描写というのはほとんどないように思える。ナウシカが共鳴するのは、人じゃなく自然だけなのかな…という疑問が過ぎってしまう。誰かを助けたいのではなく、谷を守りたいという側面しか見えてこない結果、もっとパーソナルな感情を描いてほしかったと思ってしまうのである。オームの群れへと突撃した結果、オームによってに救われるということが、選ばれし者だからというだけではねぇ…。

すごく久々に観直してみて、シーンを思い出すという目的に加えて、意外にも僕は人間ドラマを観たいんだということを再確認させられました。

(評価:★3)

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