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[コメント] 汚名(1946/米)

意味のないサスペンスを、ここまで意味有り気に見せ、必要以上にドキドキさせる。物語より演出で映画を観る人には垂涎の映画。それほどヒッチコックの巧さが光る。(2007.05.27.)
Keita

**ネタバレ注意**
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 いかにもヒッチコックらしい映画だと思う。「映画術」の中で、この映画を絶賛する聞き手のフランソワ・トリュフォーに対し、ヒッチコックは必要以上にウラニウムはマクガフィン以外の何物でもないことを強調しているが、それもその通り。サスペンス映画の体は取っているが、サスペンス的なものこそ何も核心に触れていないのだから。

ただ単に映画を盛り上げるための要素。そこに、あの「鍵」や、ワインボトルの中の「ウラニウム」が含まれる。核心には触れる要素ではないのに、それに惑わされ、緊迫感の中で最後まで映画を観てしまう。そこにヒッチコックの罠があり、彼の映画での演出の巧さがある。

 では、この映画の核心とは? それはケイリー・グラントイングリット・バーグマンのラブストーリーであり、グラントがバーグマンに対して「愛してる」というまでの物語である(ワンカットでの囁きながら連続キスシーンがあるが、あの場で「愛してる」を言わないところがミソ)。それを盛り上げる要素として、上記のようなサスペンスにおけるマクガフィンがあるわけだ。後の『北北西に進路を取れ』ともその点では似ている。

 そして、定番の監督のカメオ出演だが、ボトルが減っていくのが気になる状況のパーティで酒を飲むというのは、監督が映画のリズムを支配しているという象徴。この辺もニクい。だからこそヒッチコック映画は面白い。

(評価:★4)

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