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[コメント] フィクサー(2007/米)

プロットも良く、構成も良く、緊迫感もあり、演技も見応えある。ただ、サスペンスなのか人間ドラマなのか序盤で焦点を定めきれず、それが終盤にも影響した。非常に勿体ない作品に思える。(2008.04.20.)
Keita

**ネタバレ注意**
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静かながらも緊迫感を生むサウンドトラックの良さもあってか、全編通して続く緊張感は見事なもの。オスカー候補になった役者たちの演技もハイクオリティ。ジョージ・クルーニーは抑揚のある演技で主人公マイケル・クレイトンの感情を表現し、トム・ウィルキンソンは冒頭の語りから鬼気迫るものを感じさせ、ティルダ・スウィントンは悪役でありながらも精神的な疲労を体現した素晴らしい演技を見せていた。

だが、もっと良くなり得た映画だと思う。

くたびれた表情のジョージ・クルーニー演じるマイケルがフラっと馬を眺めている場面でいきなり車が爆破。そのエピソードから4日前に戻るという構成はかなり引きがあった。しかし、そこから核心に入るまでに時間を要しすぎた。もちろん、僕の無知もあって状況を理解をすることに時間がかかったというのもあるが、トム・ウィルキンソン演じるアーサーが殺されるまでの描写をもう少しコンパクトに出来なかったものか…。

この映画は人間ドラマでもあるが、やはりサスペンスなのである。事件が起こってこそサスペンスは始まるはず。逆に言うと、ドラマを掘り下げるにしては短すぎなのだ。焦点を定めきれていない印象が拭えなかった。

中盤以降の展開は途切れない緊迫感と役者の演技のぶつかり合いもあり、硬派に魅せてくれたが、その分やはり序盤の失点が悔やまれる。

ラストシーン、揉み消し屋として金のために動いてきた男が静かに正義感に芽生え、静かに安心して街を去っていく様子。これはシーンとしては余韻が残るすごく良いシーン。だが、序盤がサスペンスとしても人間ドラマとしても曖昧だったがために、どうしても下地が薄いように感じてしまったのだ。なんとも勿体ない映画だ。

(評価:★3)

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