実話ベースとは言え、監督も脚本も73才のおじいちゃんじゃない。73才のおじいちゃんではない人達が作った73才のおじいちゃんのお話で、73才のおじいちゃんではない我々が73才のおじいちゃんの気分になる。

このことが表す映画っていうメディアの可能性の広さや、制作者の手腕も素晴らしいことだと思います。が、このゆったりとしたリズムは必ずしもお年寄りだけが持てるものではない、ということも示しているんじゃないでしょうか。

僕は最初これを観て「歳をとることって素敵だな」と思いました。ですが（積み重ねた経験はさておき）、このリズムを放棄して暮らしているのは僕ら自身なんですよね。もちろんいつもゆっくりと暮らしているわけにもいかない。でもたまにこんなリズムで深呼吸して周りを見回すのは、若い僕らでも全然できないことじゃないんです。

不景気でトゲトゲしい世の中で、たまには仮想おじいちゃんになってみようかな、なんて思いました。ゆっくり見回せば、また新しい経験も積めるかもしれないしね。