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[コメント] ACACIA アカシア(2008/日)

猪木のキャラクター頼りな映画にならぬよう、辻仁成は最大級の臭い消しを行ってきた。そして出来上がったのは退屈で垢抜けない空っぽの100分間。辻の「オシャレで真摯な俺」な戯言を聞かされるくらいなら、普段の猪木の妄言で辟易している方がまだマシだ。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 最初に書いておきたいんだけど、僕はプロレスオタクではあるがアントニオ猪木信者ではない。世代が違うんだ。今のプロレス界において猪木の立ち位置は「老害」に近く、僕も猪木にはそれに近い感情を抱かされることの方が多い。ただそんな僕をして尚、今作については「猪木さんは悪くない」と思った。猪木はいつもの調子で与えられた仕事を深く考えもせずにこなし、それは求められただけのクオリティで相応の効果を上げている。問題は辻仁成だ。この人が猪木の臭いを消したことで、残ったのが辻本人のイモ臭いオシャレ感だけになっちゃったんだ。

 そもそもこの人、今作ににおいてもまた本気の勝負を仕掛けていない。事の本質に直接手を触れることはせずとも、自分が考えるオシャレな雰囲気の積み重ねで物語が構築できると思っている。主旨を声高に叫ぶことをせずとも、観客の心に感動を染み入らせることができると思っている。いや、そりゃもちろんできるんだよ。できている監督だってたくさんいる。ただそれはそれなりの頭や技能があっての話であって、何となくそれっぽい絵面を並べて「はい染み入ってください」と言われても、こっちも「あ、じゃあ失礼して染み入ります」ってわけにはいかないんだよ。

 劇中三度も四度も繰り返される人食いザメのシーンでもわかるように、今作の中には辻的に「超染み入るよね。オシャレカッコいいぜ俺」というシーンがいくつもある。これらがハッキリ言って稚拙極まりない。そしてそれらが平易に繰り返されるだけの100分間は、もう拷問に近いほどの退屈さを以て僕らに襲いかかってくる。ぶっちゃけペラいんだよ。全てがペラい。川津祐介とスズメのくだりとか、もう金取っていいレベルじゃないよあれ。

 『デビルマン』や『DEEP LOVE』とかのド酷さすらない、ただただそれっぽいだけの時間。唾棄すべき本質すら見出せない時間。こういう人は路上で「あなたのために言葉を書きます」とかでもやってりゃいいんだ。そうでなくてもせめてプロレスを巻き込まないでいただきたい。ラブレターで校舎裏に呼び出されてカツアゲされた気分だ。だいたい「大魔神」とかねぇから!何だその名前。プロレスバカにすんな!

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)McCammon きわ

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