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[コメント] ネバー・サレンダー 肉弾凶器(2006/米)

“ワル学の博士”“You Can't see me”こと我らがジョン・シナの筋骨隆々ド直球ファイティングアクションだと思って鑑賞。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







結果基本的にはそれに違うことのない筋骨隆々ド直球ファイティングアクションだった。軍隊しか知らぬ筋肉男が愛する妻を救うため走り、殴り、爆発し、殴り、殴る。

ただこの映画、どうもそこだけに満足していないというか、あちらこちらに「スタイリッシュでありたい」という色気が見て取れる瞬間がある。その最たるものは悪役の人物造形。普通こういう映画の場合、勧善懲悪用に特化した徹底的な悪、もう人を殺して金を儲けるために生まれてきたような悪役が出てきて然るべきなんだけど、今作では彼らの会話の節々に“人間味”を与えるようなエピソードが盛り込まれる。特に黒人の彼が顕著で、「黒人はバンには乗らない」と駄々をこねてみたり氷砂糖のトラウマを語ってみたりと、それはまるで『レザボア・ドッグス』の冒頭シーンを目指しているかのよう。バックにもオシャレ音楽かかってたりするし。

他にも追い掛けてくるシナを見た部下が、逃走中の強盗団のボス(『ターミネーター2』のT-1000でお馴染みロバート・パトリック)に向かって「ありゃターミネーターだ」などと言ってみたり、とにかく「映画として少し肩の力を抜いている」感を出したがる今作。恐らくはそれがCoolでHipでワルでSTFUな21世紀のエース、ジョン・シナのファン層にウケると踏んでいるんだろう。

問題はそれがそれとして機能していないというか(まぁ全く機能していないわけではなく軽い味付けにはなってるんだけど)、全体の筋肉アクションと上手く混ざり合っていないという点だと思う。どうも悪役連中が“人間臭い”というよりは“頭が悪い”ように見えるんだ。そしてその対比としてシナのキャラクターが大変に薄っぺらくなってしまっている。

ただまぁプロレスラー主演のアクション映画と言えば昔から頭の悪い善玉vs頭の悪い悪玉と相場は決まっているので、上述のようなアプローチは失敗というよりむしろチャレンジ、前進と受け取りたい。WWEの映画戦略は、確かに「映画としての質を高めたい」という方向に向いているんだ。そしてその結果90分間ダレることもなく、それなりのツボも押さえて面白かったんだから充分じゃないか。足りなかったことと言えば格闘シーンの中にシナの得意技“FU”が出てこなかったことくらいさ。本当は肉弾版『8Mile』的な映画の方がシナに向いていると思うんだけど、それは次回作に期待することにしよう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペンクロフ[*]

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