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[コメント] 横浜暗黒街 マシンガンの竜(1976/日)

初監督の岡本明久が自分の思う「カッコいいもの」を羅列し、それを繋ぐために辻褄を合わせていったような作品。盛り沢山にしようというその手法自体は構わないんですが、そもそも「カッコいい」のセンスが間違っているので変なものが出来上がりました。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 いや、大体わかるんですよ。恐らくこの監督は「マンマにだけ頭が上がらない残虐なイタリアン・マフィア」パターンが好きだったんでしょう。でそこに「暴走族モノ」や「刑務所モノ」、「空手アクション」を入れつつ、「男と女、雪の逃避行」に持って行きたかったんでしょう。要はあれもこれもそれも全部入れて、娯楽盛り盛りのご機嫌な映画にしたかったんだと思います。

 僕はそういうサービス精神は決して嫌いじゃないし、実際飽きさせない作りにはなっていたと思います。初監督作品らしく、少なくとも細部にまで熱意は籠ってる。一所懸命考えた跡もある。

 ただねぇ、そもそも「文太マフィア」って。真っ赤なスーツにマシンガンって。いくらなんでもそれには酔えないだろう。「マザコンマフィア」ってキャラクターも、描き方が変に生々しいために近親相姦の匂いが強すぎ、始まって早々かなり居心地が悪い。また子分の暴走族たちが殺された後、彼らについての言及が一切なされないため、バイクアクションと虐殺シーンのためだけに出してきたのが見え見えです。

 前半の「マフィアもの(=ロック)」と後半の「逃避行もの(=演歌)」の乖離もキツすぎ。あれだけ前半で強烈に描いた母親の存在が、後半になると影も形もなくなってしまうため、結局彼女ですら調味料の一つにしかなっていないんです。だからといって連れの女が母の代替となっていく過程でも描いてあるのかといえばそうでもないし。

 要はちょっとセンスの間違った「カッコいい」を連射するのに夢中で、人物への愛着が感じられないんです。「ツララを手折ってオンザロック」とかやってる暇があったら、もう一歩人間を描く努力をした方がいい。

 まぁそんな展覧会の着せ替え人形に使われた菅原文太にとってはいい迷惑だったかも知れませんが、熱意からか作品のテンションだけは妙に高く、インパクトのある作品にはなりました。心の中で★2と★4を乱高下した結果の、ある意味価値ある★3です。「半狂乱で怪鳥音を発しながら号泣する文太」なんて初めて観たし。

(評価:★3)

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