興行収入はともかくここまで評価が高いのは、今までのバットマン映画を見てきた自分としては違和感があった。それだけ今回の作品にはインパクトがあったのだろう。アメコミの映画というよりは、アメコミの設定を借りたハードボイルドのような感じがする。前作ビギンズでの真面目演出を今回はさらに突き詰めたもので、ビギンズ以前と違い息苦しさを感じる。

自分はバートン第一作がかなり好きで、なおかつニコルソンジョーカーが大好きなので、ヒースジョーカーには大絶賛はできなかった。原作のジョーカーは多少知っている程度なのであまり語れないが、ヒースジョーカーは生真面目過ぎて、悪を楽しむというより正義に対するアンチテーゼを追及しているという感じがする。正義とは何だ？！と問いかけているようだ。まるで元正義の味方があることをきっかけに絶望してああなったという感じだ。

しかしそう考えると最後のバットマンの行動には感動するものがある。ヒースの演技のおかげでジョーカーは予想以上に良かったが、それ以上にバットマンの苦悩や決意が感じられその意味では最高傑作だと思う。ジョーカーみたいにはならないぞ！という決意はある種感動的でもあった。

トゥーフェイスはトミーリー版に比べ焼け跡がリアルで、鬼気迫るものがあったが、所詮はジョーカーに踊らされてる感があり、もう一つだった。もっと悪への転落をじっくり描き次作へ持ちこしても良かったと思う。特徴である二面性はバットマンにも通じるところもあり、このスタッフなら展開を色々広げられたと思うだけに残念だ。

しかし悪役に脚光を浴びがちなこのシリーズをバットマンにぐっと引き戻した新シリーズ。今後の展開が楽しみだ。