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[コメント] 卒業(1967/米)

映画史でも屈指のネタバレラストによって、爽やかな青春恋愛映画と思って観たら僕のように戸惑うでしょう。皮肉とユーモアに満ちたブラックな映画だと思います。
新人王赤星

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







成績優秀で自慢の息子。そして親の望むように生きてきた息子。彼の目から見た上流社会=大人の社会を冷めた視線で描いています。また、そんな環境に振り回されながらも逆らうことなく自慢の息子としての役割を果たすベンジャミン、大人社会に仲間入りするべく背伸びする彼の姿さえも冷めた視線で描き、惨めで滑稽で面白い。

冒頭のパーティーでは大学を首席で卒業したものの虚無感を漂わせ見えない将来に不安を感じ、 潜水服を披露する場面では大人達の前で道化然とし、 魅力的な夫人から誘われれば、純情で臆病な青年は最初は恐怖と困惑で拒否するが、結局は童貞君の性欲が勝る。 ホテルのフロントから部屋に至るまでの青年の大人としての振る舞いは最高に可笑しく、童貞を見抜かれないようと必死で、部屋で夫人の胸を触りキスをするシーンの不細工さ、一人壁に頭を打ち付ける間抜けさはたまらない。

大人への入り口に立ち自分の生きてきた道とこれからの道を考える不安な時期を感傷を抑えて、むしろ意地悪に描いていると思います。

大人の女性の手管に溺れ人生のつかの間の無為な退廃を堪能する青年。 やがて失う愛の為に自分の衝動で行動を起こす。それは親を喜ばす為でもなく、大人に与えられたレールでもない、青年にとって初めての青春の反逆とも言えるでしょう。

ラスト、この無謀で少女漫画のように現実感を欠いた甘い行動に浸るベンジャミンと対照に静かな表情のエレン。余韻を冷ますようなバスの乗客の冷たい視線。結局は若者の幼稚なオイタに過ぎず、すぐに壊れるかもしれない、このまま駆け落ちして辛い現実に苦労するかもしれない、もしかしたら幸せな人生が待っているかもしれない。それはわからない。

最後まで監督は冷めた皮肉に満ちた視線で大人と若者の葛藤を描いてとても良かったです。

映像もアメリカンニューシネマらしく乾いたタッチが良く、多少クドかったけどサイモンとガーファンクルも盛り上がりました。

もしオチを知らずに観たらどうだったろう・・。素直に感動したのかな・・。リアルタイムで情報無しに観たかった・・。

(評価:★4)

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