コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ロゼッタ(1999/仏=ベルギー)

ゼロ・サム・ゲーム。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







誰かがそのポストについたら、他の誰かがそのポストを追われる。仕事の奪い合い。本当に問題なのはそういう配置をおこなっている中小工場の社長なのかもしれないし、もっと言えば高失業状態をつくりあげている社会体制(労働問題に無策の政府)なのかもしれない。

しかし、彼女はそのような「上」のものに目を向けることはない。彼女の恨みや怒りは、その小さなポストを競合する同輩(ライバル)に向けられる。なぜなら彼女にはその日一日一日が死活問題なのだから。彼女を取り巻く周りの世界(社会構造)を見せずに執拗に彼女の行動だけを追い続ける、あの不快なカメラワークにはそのような意味があったのなら、決して好きにはなれなくてもある程度納得できる。

あのラストでかなり救われた思いがした。本当は同じ思いを共有できるはずの同輩たちが深刻な「敵」である彼女は、いついかなるときでもある種の「仮面」を身につけて生きていかなければならなかった。そんな「仮面」が崩れ落ちたとき、彼女が彼に見せた一瞬の素顔。たいへん印象的だった。

ただ、いくらそこに到達するまでの過程だったとしても作品全体にだるさを感じたのも事実。『ユマニテ』といい、この年のカンヌの選び方にはどうも抵抗を感じる。(★2.5)

*職を追われたような状態の、今現在の私にこの作品を薦めた友人は、ひどく残酷である。観てて本当につらかった。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)死ぬまでシネマ[*] ゆーこ and One thing[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。