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[コメント] バッファロー’66(1998/米)

ダメ男にもいろいろあるだろう。
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







洗面所で「生きられない」と煩悶する男。おそらく何度もうまくいかないことを体験してきて、それがフラッシュバックしてくるからだろう。振り払うことの出来ない悪循環の亡霊。作品のなかでも、たまたま使用可能なトイレが見つからない、いつも頭ごなしの態度をとってくる父親には見透かされてしまうのに再度ついてしまう嘘、初恋の人がタイミング悪く登場、そしてここ一番のギャンブルでの敗北。ダメ男といってもいろいろなタイプがいるが、彼は間違いなくタイミングの悪い男、そして運が悪いゆえにそれが内面化され、いつも負けるイメージしか浮かばなくなっている負け犬根性のダメ男である。(すべてのダメ男がこのようなわけではない。なかにはダメでも徹底的に楽天的なやつとか、本当にあきらめたところで開き直るやつとか、いろいろいるはず。)

自分の負け犬根性や繰り返される悪い流れを誰よりも知っている男は、それを必死で打ち消そうとしている。だから虚勢をはる。あの復讐だって、本当に逆恨みしているわけではなく、自分でもバカバカしいとわかっていながらも、何かを為すことで、必死で自分の運命の悪い流れを断ち切ろうとしているからこそ、実行寸前までいったのだろう。『タクシードライバー』のデニーロのように、また古谷実の「ヒミズ」においての、悪い人を探して街を徘徊する主人公のように。しかし、初めて自分のためではなく人のために自分の命が惜しいと感じたとき、鈍感な男はようやく気づいた、この女と出会ったときに悪い流れは消えていたのではないか。そして男は自分用にではなく、人のためにクッキーを買う。

こんな見れば誰でもわかることを書きたくなるのも、自分がこの映画を好きだから。そして、いくらダメな奴でも、いくら不器用な形でも、男は自分の人生を変えていこうとしているから。クリスティーナ・リッチはそんな歪んだ形で前向きなダメ男への、世界からの贈り物である。純然たるファンタジー映画。

*(追伸)いくら好きでも、私のハンドル・ネーム自体はこの作品とは直接、関係はありません。

(評価:★5)

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