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[コメント] 俺たちに明日はない(1967/米)

駆け抜けきれない(ゆえに)青春。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







卒業』同様、ラストがあまりにも有名なために印象が先走りしてしまう作品。ラストだけだと、破滅を求めて野放図に疾走していった二人の物語というイメージが浮かんでしまう。

ところが、実際はその逆。クライドの性的不能にもっともよく象徴されているが、彼らの行動はそれほどうまくはいかない。最初に押し入った銀行は破産しているし、金を奪えても車が前に待機していなかったり、保安官と写真を撮ろうとしたら唾を吐きかけられたりするなど、かっこいいとは対極でほとんどが思い通りに進まない。あの軽快な音楽でだるさや焦燥感が巧妙に相殺されているが、駆け抜けきれないもどかしさこそが作品に流れる主旋律だったのではないだろうか、そしてそれはオーソドックスな若者たちの描き方でもある。

後半部分、二人は駆け抜けようとするのではなく、立ち止まること、安住の地を夢見る。しかし、二人は追われる身であり常に銃口が向けられている立場なのだから、それはかなわない夢であったし二人はそれを自覚していた。他の方の指摘のように、二人の目線、鳥の羽ばたきなどなどラストシーンはどこをとっても素晴らしいのだが、ラストシーンのなかでも本当に最後のカットは、二人を蜂の巣にしたあとの保安官たちの様子を捉えている。保安官たちが構えた銃を下ろすことで、直接画面には映らない二人の不在が強調される。二人に銃口が向けられなくなった瞬間、印象的だった。

そして、本当の意味でのラストシーンは、ボニーが母親と会ったときのくだりだったのではないだろうか。皆とともに丘の上で大いに遊び語らい合う、それは最期の瞬間に二人が見た夢だったのかもしれない。だからあそこの画だけざらついたような、現実離れしたような撮り方だったような気がする。せつなさが胸をつく作品である。(★3.5)

(評価:★3)

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