[コメント] タクシードライバー(1976/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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その男は、女をポルノ映画に連れていって嫌われる。別の場所につれていけば…、ああすればよかった、こうすればよかった、後悔の嵐。負けた戦い、後悔の戦争から帰ってきた男は、後悔の連鎖を止めたいと欲した。
それには目的が必要だった。ニューヨークにはびこる悪を除去すること、その男にとって、これ以上のうってつけな目的は他になかった。
それ以来、男は「迷わない」存在になった。
どの銃を選ぶかなど、男は迷わない。全部買う。
大統領候補の暗殺は、単に候補がその男にとって接近可能な存在だっただけ、ポスターが目についただけ、誰にするかなど男は迷わない。
いたいけな女を救って死ぬ、男にとってこれ以上崇高な行動はない、その方法について男は一旦思いついたら、もう迷わない。鏡の前でひたすら訓練し、戦闘意識を高めるためにモヒカンにするだけ。
外から見るとちぐはぐに見える男の行動、しかし男の中でそれらは分かち難く結びついている。だから男は迷わない。
男の後ろ向きな衝動は、人間の中に眠るある普遍性を体現していることは確かだが、そんな男の姿にスポット・ライトをあてたのは時代の要請だろう。
この作品に5点をつけられないのは、男の行動と言動を目撃して、「そりゃやばいだろ」と思う気持ちと、その衝動に強く惹かれてしまう気持ちとの間でさいなまれる自分が「迷う」存在だから。本作で描かれた世界は、そんな男を突き放すだけで、観る側の「迷い」を解きほぐすヒントをくれないから。
*「大統領候補」「モヒカン」などの「固有」名詞を除いたなら、男の部分に奥崎謙三を代入しても、はたしてあてはまってしまうのか?私は否定したい。奥崎は鏡の前で訓練するとは思えない。
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