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[コメント] 天然コケッコー(2007/日)

彼女はいろんなことを考えている。
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この年頃の女の子を登場させるとたいていの作品は、部活の運動やら演奏とかに集中する姿を描いたり、憧れの人への不器用だけどひたむきな愛情を描くことに終始してしまう。

しかし、本作の主人公は転校生の男の子に好意こそ寄せるが、けっして他のことが見えなくなるほど夢中になっているわけではない。お漏らしをするまだ幼い子のことが気にかかるし、バレンタインデーの時には惨めな思いをさせたくないと弟のことを気にかけるし、一学年下の女の子に出すぎたまねをしていないかどうか気にもなり、パーカー付きの上着を通販で手に入れたいと思い、父親の浮気による家族の崩壊を警戒もしている。将来、東京のような都会に出ていく自分の姿を想像するし、愛おしくてたまらない自分の母校が将来廃校になってしまうことを心配もする。

とりとめのないほど多くの心配や気遣いをしながら彼女は生きている。そうした数々の細かい描写によって、都会の高層ビルの音が地元の山鳴りの音と同じであると感知する彼女の姿が、他の誰でもない彼女の偽らざる姿であるということへの説得力が備わる。こうした厚みのある人物像は、(原作の力もあるのだろうが)渡辺あやの脚本と、間を描く演出に長けた山下敦弘ならではのものなのだろう。(★3.5)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ジェリー[*] [*] 緑雨[*] おーい粗茶[*] JKF[*] ぽんしゅう[*] ミドリ公園

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