『レイジング・ブル』において、リング上で滅多打ちにされてもリングに沈まなかったジェイク・ラモッタ役のロバート・デ・ニーロが吐いたセリフが、上記のコメントである。あの頃のシャープな映像に比べ、明らかにマーティン・スコセッシが手がける画面の緊張感が緩んでいることは否めない。

だが、鏡の前で一人っきりで苦悶する男の姿に、往年のスコセッシ作品の主人公たちの姿が重なる。周りから見ればどんなに衰えていても、引き際など考えずただひたすら自分を信じて闘う男。いつしか、監督としてのスコセッシ自身もその男たちの姿に重なる。どんなに惨めな状態にあろうとも、目だけはギラギラしているハワード・ヒューズ。そのギラギラした目が消えない限り、スコセッシ作品の価値は損なわれない。その目にこそ観るべき価値がある。