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[コメント] マトリックス リローデッド(2003/米)

こんなのは『マトリックス』じゃない。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







タランティーノも怒ってたぞ、「あんなのがザイオンかよ!」。

必ずしも前作が完璧な傑作だとは思わない。部分部分、興醒めする大仰なカメラワークや効果音もあったし、頂けないSFデザイン(船とかイカ軍団とか見事に今回出番の増えたあたりなんですが・・・)もあった。しかし、VFXとアクションの融合の道を切り開き、一大旋風を巻き起こしただけの作品であった事は紛れも無い事実だろう。前作の何が素晴らしかったかというと、それはシンプルな面白さ。驚愕の真実を知らされた主人公が、わずかな仲間達と共に、圧倒的な強さとしぶとさを備えた敵の魔の手をかわし、電話を使い現実と仮想空間とを行き来する攻防を演じるストーリーは素直に楽しめたし、それを彩る映像や衣装、音楽も率直にカッコ良かった。オタク要素のゴッタ煮状態ながら、とにかくシンプルに楽しませている作品で、前記の通り一部不満足な箇所はあったものの、見飽きない面白さがあった。ところが、この続編ではそのシンプルな面白さが失われた。イメージの貧困化も明白だが、何よりもこの点が最大の問題点。

まず、主人公はもはや無敵である。死からの復活も成し得、弾丸を避ける必要すら無くなったネオが何故格闘戦を演じる必要があるのだろうか?ハッキリ言って前作を否定された気がしてならない。前作のラストで救世主となった彼は、もはやマトリックスのあらゆる物理的制約・生理的制約を拒めるのでは無かったのだろうか?高速で飛ぶ弾丸を「存在しない」として意思一つで止めてしまえる彼が、群がる敵を倒すのに手足を動かす必要などあるのだろうか?そもそも彼は痛みや疲れも感じないハズである。また、いざとなれば空の彼方へ一飛びだ。そんな鼻から勝敗が見えている上、必然も疑わしいアクションに盛り上がれるわけがない。おまけに一対一中心だった前作に対して、今回は一対複数のシーンが増えて殺陣がより複雑化したためか、アクションのトロさが丸出しとなり、その寒さに拍車がかかる。

スミスも無駄に殖えたが、登場人物も無駄に増えた。仲間が減っていく危機感などまるで無い。前作はなかなかシンプルかつストイックな人物配置で好印象だったが、今回はバラ撒かれっ放しのキャラクターばかりでうんざり。他にもあらゆる面が無駄に増える一方で、高予算化による過剰VFXは先輩格『ブレイド』の続編同様、TVゲームのような見応えの無い映像にたどり着く始末。ザイオンの無駄に多いエキストラなどを見ていると、『スター・ウォーズ エピソード』シリーズのような物量戦略を取るつもりなのか違うのかハッキリして欲しくなる。どうでもいい哲学気取りの会話も倍増で飽き飽き。

ついでに、前作で大きな役割を果たしていた電話の登場シーンも減った。あれもシンプルながらなかなか面白いアイディアだったと思うんだが・・・。

これは問答無用に駄作だ。完結編がどうなろうと、この一本は間違い無く駄作だ。主人公は飛ぶし、ヒロインは生き返るし、悪役は増殖するし、今更画面の中で何が起きても感動なんか微塵も無い。技術に呑み込まれた映像に斬新さなんか感じられない。多少曖昧な設定を残すにしても一作目で終わってくれていれば良かったものを・・・。

(評価:★2)

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