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[コメント] 狂い咲きサンダーロード(1980/日)

環境への適応が決して叶わぬ狂い咲きの花が選んだ道は・・・涙が止まらなかった。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







周囲は調和を乱す狂い咲きを恐れ、「大人になれ」「目を覚ませ」とその無謀な行いを阻止しようとする。しかし、狂い咲きの花たる仁(山田辰夫)は懐柔の言葉を拒絶し、己の花を咲かせ続け、遂には粛清を受ける。一度は枯れかかった狂い咲きが選んだ道は皆殺し。抑え切れない全てへの憎悪。暴走族に右翼に警察、全て皆殺し。共生不可能の一輪の狂い咲きは周りを枯れ尽くしてまで己の花を咲かせる。皆殺しの狂い咲き。再び花を咲かせるも、所詮は狂い咲き、何一つ残す事など出来ず散って行く。しかし、一体誰にこの壮絶なまでに孤独な生き様を非難する権利などあろうか。「ブレーキはどうすんだよ?」戦い終え、バイクにまたがった満身創痍の仁が見せた最初で最後の満面の笑顔。あまりの悲しさと美しさに涙が止まらなかった。

実質的に自主制作。画面が見辛いだの、演出が臭いだの、セリフがやかましいだの、ガンエフェクトが安いだの、爆発がショボイだの、小林稔侍のホモっぷりは演技の域を超えているだの(違)、そりゃあ色々あるにはあるさ。しかし、このフィルムに焼き付けられた熱い魂は尋常なものではない。これは断言出来る、いかなる理論・理屈を持ってしてもこの映画の魂を殺す事は何人たりとも不可能である。どうしようもないほどのエネルギーとキレたセンス(特に「スーパー右翼」のネーミングに唸る!)とが大爆発して生まれたのは、この超然たる伝説を築く怪物的傑作であった。そこに熱いロック魂が加わればなお。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)浅草12階の幽霊 ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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