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[コメント] 靖国 YASUKUNI(2007/日=中国)

一見フラットな表層の下に潜む意図が所々に見える。
地球発

 冒頭から何度も繰り返される、中国人監督の拙い日本語による質問と、これまた発音が不明瞭な刀匠による回答。この不思議なやり取りをどう受け取るかで感想が大分変わってくる。

 「中国人監督の鋭い指摘に絶句している」と捉えるか、「意味不明の質問に戸惑って黙り込んでしまった」と捉えるか。これもまた、ありのままを伝えるドキュメンタリーの1つの姿なのかもしれない。

 明らかに印象操作を行っていると思われるシーンを1点指摘したい。台湾の原住民が靖国に分祀を求めて抗議に行くというシーンがある。この首謀者である「高金素梅」は、まるで原住民の代表のように描かれているが、彼女は戦後に中国大陸から渡って来た外省人の娘。たまたま母親が台湾の原住民だったという事を利用して、売名行為を行っていることで台湾では悪名高い。むしろ台湾の原住民の多くは、彼女のこのような行為に腹を立てている。

 このシーンが、何の注釈も加えられないまま挿入されていたことで、一見あたかもフラットな感覚で撮っているかのようなドキュメンタリーの意図する所が垣間見えたような気がする。

(評価:★3)

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