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[コメント] 月世界旅行(1902/仏)

この人は同時にアニメーションも作ってしまったのではなかろうか。(2003/02)
秦野さくら

二次元と三次元の交錯する世界・・・まるで騙し絵を見ているかのような錯覚に襲われた。

面白く感じたのは、「新しい技術」を手にした人間の試行錯誤が垣間見れたこと。それは二次元への挑戦にも思えた。

たとえば、舞台なら同時に多くの視点があるから、立体的なものを平面で表現することには限界があろう。しかし、瞬間の視点が固定された「映画」では、それを平然とやってしまう。用意しようと思えば作れるような大砲や小道具なども、板に絵を書くことで済ませている。もちろん、「横から見ることができないのだから絵に描いてしまえばいいではないか! 安上がりだ、なんてステキな、バンザイ!」という目論見もあったろうが(それはそれでとても興味深い)、立体物では出せないような奥行きを遠近法でデフォルメされた絵で表現しているのはとても面白い。

月から地球を眺めるシーンなんて、鳥肌もの。ものを相対的に動かすことであたかも自分が動いているように見せるトリックは、いまや欽ちゃんの仮装大賞でだって当たり前にやられているけど、それをまだ人類が月に行くことがSFだった時代の人間がやってしまったのだから面白い。二次元で失ってしまったZ軸をどう見せるか、舞台の技術で使えるものは取り入れそれをさらにどう見せれば面白いか、そういうことに砕心している様子がよく分かる。

これを観て、「観客の瞬間視点が1点に集約されたこと」ってデカいことだったんだなあ・・としみじみ感じてしまった。

(評価:★4)

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