コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 少林サッカー(2001/香港)

「面白さ」だけを武器に、チャウ・シンチーが環状線を突破した!
ペンクロフ

アントニオ猪木が唱えた「猪木環状線興行理論」というのがあります。

環状6号線の中の人々。これは熱心なプロレスファンなので、何も宣伝をしなくても、自分で専門誌の情報を調べて観に来てくれる。後楽園ホール(3000人規模)ならこれで充分満員になる。

その外をグルリと囲む環状7号線圏内の人々。これはプロレスファンではあるけれど、ある程度の仕掛けをうち、情報を流さないと来てくれない。両国国技館や日本武道館(1万人規模)での興行は、7号線内の人々を相手にする。

そしていちばん外を囲む環状8号線、この中の人々は無関心層というか、誰かに強く誘われでもしなければ観に来ない。東京ドーム(5万人規模)を一杯にするためには、この人々を相手にしなければならない。無関心な世間を振り向かせるのは、大変な仕事である。

そしてこれは、映画でも同じことだとオレは思う。環状6号線内での常識は、世間(8号線)で通用するとは限らない。ハッキリ言ってキネマ旬報なんて誰も読んでないし、フェリーニゴダールなんて誰も観てない。それらは6号線内の常識でしかないのだ。そこを間違えてはいけない。

さて『少林サッカー』である。オレは半年前からこの映画の公開を心待ちにしていた。だが公開直前になって、世間でこの映画がかなり話題になっているのに驚いた。電車に乗っていても、喫茶店でも、この映画を「観たい!」と喋っている人(特に子供たち)を見かけた。映画に興味のない知人もこの映画のことを訊いてきた。それは、あるいは日本公開のタイミングをワールドカップの開催と合わせたからかもしれない。でも、それだけとは思えない。オレはこの映画が環状6号線内の功夫映画ファンの間で当然話題になるであろうことは予想していた。しかし環状8号線圏内の映画に無関心な人々にまで、この映画の魅力は届いていた! その昔、『酔拳』の日本公開で彗星のようにジャッキー・チェンが現れたとき、世間の反応はこうだったのではなかったか?

新宿で初日(2002年6月1日)に観た。映画館は爆笑、拍手、感動に包まれた。映画が終わって、席を立つ人々の顔は輝いていた。映画館の外に並んで次回の上映を待つ人々に、「凄いよ! この映画ホントに凄いよ!」と叫びたい衝動に駆られた。文句なしに面白い映画がそこにあれば、客は来る。ふだん映画を観ない人々も、映画が発する熱に吸い寄せられて映画館へ足を運ぶ。『少林サッカー』は環状6号線から8号線まで、全ての層を熱狂させる映画だ。チャウ・シンチーは溢れるエネルギーをもって、「面白さ」だけを武器に、間違いなく環状線を突破したのだ! 脱帽!!

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (51 人)ほーりー ほしけん ミドリ公園 dappene[*] IN4MATION おーい粗茶 Yasu[*] ゼロゼロUFO[*] Osuone.B.Gloss[*] uyo[*] 新町 華終[*] stag-B movableinferno[*] ミュージカラー★梨音令嬢[*] ペペロンチーノ[*] kaki[*] 緑雨[*] kazya-f[*] すやすや[*] 鵜 白 舞[*] NAMIhichi プロキオン14[*] ふかひれ[*] shaw[*] ぱーこ[*] peacefullife[*] トシ[*] ina mimiうさぎ[*] さいた[*] 浅草12階の幽霊[*] m[*] ホッチkiss[*] washout[*] 甘崎庵[*] chilidog[*] 水那岐[*] Ryu-Zen[*] あき♪[*] ハム[*] X68turbo[*] [*] ネギミソ[*] peaceful*evening[*] kiona[*] ピロちゃんきゅ〜[*] ナム太郎[*] ジャイアント白田[*] べーたん[*] torinoshield[*] スパルタのキツネ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。