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[コメント] 風の谷のナウシカ(1984/日)

宮崎駿の想像力が客を圧倒する力を持っていた頃、確かに『風の谷のナウシカ』は誰も見たことのないものを見せてくれた。
ペンクロフ

冒頭の死んだ村、すぐ消える説明字幕、不思議な飛行機械、腐海の驚異、王蟲の抜け殻、巨神兵の頭蓋骨、王蟲の暴走、風の谷へ。まだ誰も見たことのないものが続々登場して観客を圧倒するこの導入は、本当に素晴らしい。今ではもう当たり前のように思われているが『ナウシカ』の世界、特に「腐海」の発想はやはりいくら絶賛しても足りないオリジナリティーにあふれている。だって当時、SFで荒廃した世界といえばだいたいが砂漠だった。砂の惑星でありタトゥーインであり、マッドマックス2であった。普通はあんなゴチャゴチャしためんどくさいものは描きたくないし、思いつかないわけです。砂漠描いてるほうが圧倒的に楽ですよ。「コナン」で見たことあるような類型的な登場人物たちも、ムリヤリな終盤の展開もあまり気にならなかったほど、オレは腐海に魅せられてしまった。腐海の象徴的な存在である王蟲の造形も素晴らしい。王蟲の動きはハーモニー処理した複数のセル画をゴムでつなぎ合わせて伸び縮みさせスライドしているだけなのだが、絶妙の効果を生んでいる。はじめて見たときはビックリしたものだ(そのため全部セルのベタ彩色された王蟲が出てくるとその落差にヘコむのだが)。そもそも「腐海」なんて言葉はこの世になかった。「腐海」、なんと想像力を刺激する言葉だろうか?

これは充分に語るに値する作品であり、観客の思考と想像力を厳しく制限する近年のディズニーアニメとは対極に位置する映画だ。そりゃいろいろ落ち度はあります。おかしなところもたくさんあります。だがこの映画は、間違いなくアニメーションの歴史を変えた。4点は、アニメーションでやれること、その可能性を劇的に広げた志に。

(評価:★4)

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