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[コメント] ノマドランド(2020/米)

過去から自由になって、今日と明日を生きること。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







フランシス・マクドーマンド、本当に世界最高のババア役者になりましたね。『スリー・ビルボード』や今作の素晴らしさを見ると、『ファーゴ』の時って別にそんな大したことなかったような気がしてくる。ウソです。大したことありました。

冒頭の彼女は、亡き夫と捨てられた街への未練たっぷりだ。物置から厳選した物資を車に積み込んで「ワーキャンパー」になる。アマゾンの倉庫が老齢のワーキャンパーたちに支えられているなんて知らなかった。なんとなくトヨタの期間工を連想した。キャンプ場もダイナーもジャガイモ収穫も、どれもこれも低賃金労働で大変だよな。しかし貧困ワーキャンパーの生態を描く情報番組ではなく、様々に陰影深き人間の断面を描いてるのがなんちゅうか、人生! という感慨を生んでいる。

過去への執着を抱えたまま過酷な旅を続けるうちに、同じノマドたちとの出会いと別れが繰り返される。ノマドの教祖のおっさんの寄合いに参加した翌朝、束の間のヒッピー村を歩く彼女の長い長いワンカット撮影が夢のように素晴らしい。彼らの交歓には「今」しかない。今、若者にタバコをあげ、今、サンドイッチをあげる。刹那の交流を積み重ねるうちに彼女は少しずつ、過去から解放されてゆく。

最終的には廃墟の町に戻り、家財を処分(誰かに使ってもらうリサイクルだと思う)する。誰もいない廃墟を歩き、空っぽの社宅から荒野へ。夫が死んだこと、夫との生活が終わったことを受け入れる。映画の序盤の、元教え子との会話が思い出される。トゥモロー、トゥモロー、明日、明日。自由になった彼女は今を大事にして生き、旅の空で死ぬだろう。

(評価:★4)

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