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[コメント] 1917 命をかけた伝令(2019/英=米)

伝令の苦労よりも、撮影スタッフの苦労ばかりが目につく。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画をワンカット「風」にする意味がまったく理解できないのだ。カットを割らないのであれば、劇中の経過時間と映画のランタイムが同期しなくてはならない筈だ。しかしこの映画は、たぶん20時間ぐらいの出来事(まあ途中で何時間失神してたかは知らんけど)を、2時間弱に詰め込んでいる。2時間で行ける届け先、どんだけ近いねん。イベント山盛りのため、FPSゲーム「コールオブデューティ」キャンペーンプレイ動画のようなペースで次のステージ、次のステージと移り変わり、出会いと別れを繰り返す。あまりにも不自然だ。これが普通にカットを割った普通の映画で、まあオレが見てないところで時間経過してんだろうな、省略してんだろうなと思えるならば全然問題ないのである。

会話ひとつとっても、カット割って切り返すほうが両者の表情を見られていい感じになるのだ。そもそもカットを割るから映画は映画になるのだ。そりゃあ、ワンカットで見せることに絶大な意味がある場面というのはある。フレッド・アステアのダンスとか、ジャッキー・チェンのカンフーとか。この映画ならクライマックスのドカンドカン全力疾走の場面など、数箇所だろう。なにも全編ベターッとつながんでもいいのだ。誰も頼んでないのだ。

全編ワンカットの方が臨場感があるなんて世迷い言を、オレはいっさい信じねえ。ワンカット映画は監督のエゴなのである。『ロープ』を撮ったヒッチコックだって、後に「アカンかったけどな、いっぺんやってみたかったんや」と反省の弁を述べておる。そんなにワンカットが好きなら、列車の到着とか工場の出口とか撮っておればいいのだ。

2時間にわたって、どうやワンカットに見えるやろ、すごいやろ、オレってすごいやろ、というサム・メンデスの声(ロジャー・ディーキンスの声かな)が銀幕から聞こえるようだ。「オレってすごいやろ映画」と名づけよう。いや、確かにすごいんですよ。どうやって撮ってんだろう、スタッフは大変だっただろうなあ、と思うばかりだった。でもそう思わせちまったらダメだろ。劇中の2人の伝令より、制作、撮影、照明、録音、そしてポストプロダクションの英雄的プロフェッショナルワークばかりが目立っている。本編よりメイキング映像の方が面白いやつだよな。

(評価:★3)

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