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[コメント] クリード チャンプを継ぐ男(2015/米)

街は今も小さな人生を灯す
ペンクロフ

シルヴェスター・スタローンは異常に面倒見のいい男で、今まで多くの若い監督や若い俳優、若くない消耗品どもにチャンスを与えてきた。彼自身がメシも食えない状況からチャンスを掴んでのし上がった人間だからなのだろう。今回の映画は若手監督による企画・脚本・演出ではあるが、スタローン自身は世界トップクラスの脚本家であり監督である。彼がOKを出した作品ならまず大丈夫だという信頼はあった。実際観てみると思った通り。『ロッキー』らしくシンプルで、愚直で、骨太な、本物の映画だった。アポロの奥さん、ミセス・クリードには高度な演技が求められるので今回演者が変わっていたが、これは仕方なかったのだろうな。まー似てたからいいや。

クリード』は、我々が『ロッキー』を観ることで知ったもののまだ行ったことのないフィラデルフィアという街の魅力にあふれており、全編ほぼずっと楽しい映画だ。「北の国から」を観て富良野に行ったような気になるようなもんだ。しかし、楽しいばかりでは『ロッキー』にならないのも周知の事実。かつてロッキーが自分がただのゴロツキではないことを証明したように、クライマックスには、主人公にしてアポロの子アドニスという人間の本質、彼の、彼だけの動機が露わになる場面がある。我々はその瞬間に立ち会い、彼の心に直に触れ、感動する。斯様な胸打つ「真実の瞬間」がひとつ、たったひとつあるだけで、それは忘れ難き映画になるんだよなあ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)佐保家 AgentF アブサン tredair MSRkb ナム太郎[*] サイモン64[*] シーチキン[*]

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