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[コメント] ダークナイト(2008/米)

「ダーティ・ヒロイズム宣言」がどこにもない
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







3点つけるのが申し訳ないほどハイクオリティな作品で、日本の娯楽映画の現在はすでにハリウッドが2000年前に通過した場所なのだと思い知らされる。ただ、どうにも気に入らない作品でもある。

ジョーカーの造形は見事で、彼がこの映画の世界観を支配している。彼は最悪の悪役として登場するが、同時に登場人物の中で最も正しい。筋が通ってない部分も含めて、言動に筋が通っているのだ。彼の思想はこの映画をリードし、世界のありようを我々に教えてくれる。

どうにも気に入らないのはバットマン=ブルース・ウェインだ。およそこの映画の中で最もものが判ってないのがバットマンで、こいつはまず自分のことが判ってない。バットマンはジョーカー同様キチガイのド変態であるにも関わらず、それに気づいていない。バットモービルでジョーカーを轢き殺さなかった場面でオレは呆れかえった。こいつはいったい何をやっておるのだ。おお、なんとこいつは法を遵守しておるのだ。もうねえ、お前はくるくるパーかと。そこは躊躇なく轢くところだろ。そしたらジョーカーは変わり身の術かなんかで無事でした残念、て場面だろ。

てめえのルールで生きていない人間に、魅力を感じることはない。この映画はバットマンのみを覚悟の座ってないボンボンとしてはっきり描いており、それが作り手の意図通りであろうとオレには気に入らないのだ。

サンフランシスコのハリー・キャラハン刑事なんかスコーピオよりも覚悟をキメていたわけで、あれは立派な人だったと思うのだ。『ダークナイト』からは、バットマンが内なる確信に衝き動かされ行動する場面がひとつも発見できなかった。それが実に残念だと思うのです。

(評価:★3)

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