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[コメント] 日本侠花伝(1973/日)

人物を手前と奥に配置して奥行きを強調した画面設計。それが構図の面白さのみにとどまらず、ユーモアとして機能した「くしゃみ我慢」のシーンは秀逸。これに限らず、画面に映る全てのものに興味を惹かせる演出のこだわりが隅々まで行き届いている。
太陽と戦慄

ヒロインの真木洋子が冒頭から堂々とした存在感を見せてくれる。その流れるような台詞回しには思わず聞き惚れる。また、キャバレーで悪質な客からセクハラを受けた彼女をかばって啖呵を切る、刑務所仲間・任田順好の演技には胸のすくような気持ちよさを感じた。チャーミングなヤクザの親分曽我廼家明蝶といい、狂犬のような渡哲也といい、観ていて嬉しくなってしまうほどそれぞれのキャラクターが生きている。

それにしても、正面から走ってくる列車さえローアングルで撮る様式の徹底性と、米騒動シーンを筆頭とした猥雑なパワーが当たり前のように両立しているのは凄まじいことだ。画面から溢れ出る作家の情熱に圧倒され続けた至福の2時間半。脚本の出来不出来などはもはや問題にならない。

(評価:★5)

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