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[コメント] ヒーローショー(2010/日)

井筒和幸の得意とするチンピラ群像劇でありながら、今までにない厳しさが全編を貫く。若者の暴力のエネルギーを肯定的に描き続けてきたこの監督が、突如としてこのような作品を突きつけてきたことが、僕には驚愕だった。
太陽と戦慄

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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北野武キッズ・リターン』のラストは「まだ始まってもいねえよ」だったが、「ヒーローショー」は「もう終わっちゃったんだな」ということをはっきりと意識させるラスト。勿論、主人公にはその後の物語もあるのだろうが、少なくともモラトリアムな時期は完全に終わったんだということが描かれる。この厳しさにはハッとさせられる。

そして、エンドロールは唐突に明るいピンク・レディーの「S・O・S」・・・ラジオから流れてくるというのがアルトマンみたいでニクい演出だ。

紛うことなき青春映画でありながら、「青春がいかにして終わるか」ということをシビアに描いたこの映画。ストーリーだけを見れば救いがないが、どこか爽快ささえ感じるのは、井筒監督が卑小な存在、愚かな存在である若者たちに対して、愛情と理解を持って描いているからだと思う。突き放しているようで、どこか温かい。

監督の年齢を考えると、この作風の若々しさとエネルギーは本当に凄いことだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)寒山拾得[*] ペンクロフ[*] DSCH[*] まー[*] 3819695[*] 林田乃丞[*] けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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