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[コメント] 殺しのドレス(1980/米)

のびやかな、極彩色版『サイコ』。
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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公開時に観た時(十何年前?)には、夢中になった。あのころは、余りにも強烈な御本家『サイコ』よりも、こちらの若干、無邪気な『サイコ』(こちらも充分恐いけど)が好きだった。当時、私は大学の映画研究部に在籍(うっ、年がばれる!)していて、エイケン恒例の年間BEST10の第1位にこの映画を挙げたっけ。すると、あとでエイケンのいかにも眼鏡が似合うインテリっぽい先輩が、「実は、俺も去年の1位は、『エイリアン』なんだよ!」と笑顔で話かけてくれた。ちょっと、嬉しい思い出がある。

さて、『殺しのドレス』に話を戻そう。美術館のシークエンスが素晴らしい。静寂の中浮遊するカメラ。単なるナンパのシチュエーションを、あんなに優雅に撮っていいのだろうか?映画史上最高のナンパシーンか!流石、デ・パルマ!節操がないけど上手いよ!

あと、女優さんが綺麗に撮れていた。アンジー・ディッキンソンの端正な顔の 頬に宿る一本の縦じわが妙に色っぽかった。ナンシー・アレンが死体を発見して両手を髪にあてる場面の空気の震えに、ムンクの「叫び」を連想させる程の美を感じた。

美と云えば、エレベーターでメスが女の手を切るスローモーションのシーンも絶品だった。カット割りと音楽のかぶせ方。余りの美しさ、壮絶さに、切り裂かれた手の傷から蟻がいっぱい這い出てくるかと思った。何か知らんけど『アンダルシアの犬』の記憶が出できた。それほどシュールだった。

女装したマイケル・ケインもシャープないい顔立ちで。お化粧が似合っていたよ!足首がもっと細かったら、完全にタイプやん!(危ない。危ない。)あの女装の姿は完全にヒッチコックの『ファミリー・プロット』のカレン・ブラックを意識していると思う。ここにも、こっぱずかしい程のヒッチ愛が溢れる。憎めない奴だぜブライアン・デ・パルマ監督!

以上、記憶をたどれば、女、女の印象が強い映画でした。サスペンス映画なんだけれども。サスペンスの部分は他のコメンテーターの方に頼みますね。でも、本当に恐かった映画。ラストのラストは余分でしょう。このいちびり精神がデ・パルマの後半の監督人生を狂わせたのかな?うーん。

(評価:★5)

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