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[コメント] GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995/日)

ガイア(地球)に抱きしめられて
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







深い海にダイブする。夜のしじまにも似た深い海(生命の発生点)にダイブする。サイボーグが故に、自らの比重の重さで沈んでいく。(一種の自殺行為にも似た。)フローター。夕陽に照らされた赤い海面に向かって、静かに浮上する。大気と海の境界で、青と赤が乱反射し、混じり合う。彼女は自らの唇にキスをする。地球に抱きしめられながら。(ガイア仮説によると地球も生命体の一種。)

上記のシーンが、秀逸だと思う。導入の仕方。音楽。/サイボーグも人間も、地球や宇宙(これもより大きな生命体)から見れば、優れた知覚体の一種で等価なものだとの意味でしょう。作品のテーマがここに見事に表現されていると思う。

中華街のシーン/迷彩色のネオン、透き通ったウインドウ、緩やかな川面、白昼夢のような時間の流れ、全編がリドリー・スコット監督の『ブレード・ランナー』にオマージュを捧げている感じがする。更には、空中に飛来する飛行機の巨大な影(いかにも押井的風景なのだが)もこの街では、リドリー・スコットのシャネルのCFの飛行機の影を連想させる。素敵だ。

最後の方の、恐竜博物館?の廃墟での戦闘場面。恐竜の骨の埋まった壁面に銃弾が突き刺さる質感が心地良く、そしてアートしていた。うねる筋肉で、力の限り戦車を抉じ開けようとする肢体、そして砕け散る四肢に、エロスと生き物のはかなさを感じた。もの悲しい。「全てのアンドロイドに、夢を見る権利はある。」とふと思った。そう、この映画はまさしく、『ブレード・ランナー』への返歌なのだ。

余談:ラストの展開は、やや安直だと思う。しかし、あの 純愛は、幾ばくか成就した感じがする。

(評価:★5)

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