[コメント] この窓は君のもの(1994/日)
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また、主たる舞台となるタロー(榊英雄)の家(部屋)の空間設計が素晴らしく、何度となく繰り返される陽子(清水優雅子)の往来(襲来?)はもちろん、枕投げ、寝返り、水のかけあい、スイカの種飛ばしから花火を見るシーンに至るまでの各画面の多様性には、怖いもの知らずの若き勢いが感じられ、こちらにも好感を持った。
が、そのようなシーンをも蹴散らす本作の個人的な白眉は、「青春の読書」中に陽子が見せる無防備なエロティシズムの前にタローの悶々とした気持ちが最高潮に達してしまうシーン。ここに至っては、今やもう想像することすら忘れていた遥か彼方に置き忘れたような思いがよみがえり、たまらない気持ちになった。
陽子を演じた清水優雅子は、決して整い過ぎていない、けれど愛嬌のある、それこそ転校して遠くへ行くなどと言われたら、それまで秘めていた自分の気持ちを伝えずにはいられない、どこにでもいそうでなかなかいないクラスのマドンナという役が本当によく似合っていた。お世辞にも演技はうまいとは言えなかったが、だからこそ自然な親近感に溢れ本当に印象に残った。
今はこの世界から離れておられるようだが、私は本作にとってはそれでよいのかなとも思う。ただ、版権の関係か、本作を含む古厩智之の初期作品がソフト化されず、多くの人が気楽に触れられないのはとても残念なことだ。それこそ本作で「好き」の一言が言えなかったやつらの分まで本作を「好き」だと公言し、その一言がいつかはソフト化につながることを夢見て、多少甘いかもしれないが、あえて最高点を付けておくことにしたいと思う。
追記:小さな水路に流れる水の音も素敵だったことを思い出した。忘れないうちに記録しておく。
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