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[コメント] ゴッドファーザー(1972/米)

自らの信念を捨て、ただ金のため出演を重ねていた過去のカリスマがこれぞ起死回生の機会と役作りに没頭し、その姿に影響された若き才能が重厚なドラマの中に絶妙な個性の華を開いていく様を見て、これはやはり生まれるべくして生まれた傑作だという感を抱いた。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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冒頭の結婚式から馬の頭に至る、ビトがゴッドファーザーと尊敬され恐れられる所以を見事に表現したくだり。ビトの暗殺未遂から病院での防衛、そしてレストランでの復讐に至る、マイケルの父への思い詰まったサスペンスフルな演出の数々。ひとときのやすらぎも束の間に、マイケルからその笑顔を消し去るとともに、彼がマフィアの、復讐の道へと進むきっかけとなった最愛の妻の爆死が印象的なシチリアのシーンと、その間に効果的に挟まれる、ボニー&クライドばりのソニーへの銃撃。イタリアの象徴ともいえるトマト畑で孫と遊びつつ迎えるビトの静かな最期。組織の衰退が噂される中、マイケルの指示によって繰り広げられる敵対組織幹部の大量暗殺。そしてラストの妻のあの表情 … ザッと思い出すだけでもこれだけの印象的なシーンが脳裏によみがえる。そしてそれらのシーンをまとめ上げる、映画の象徴としてのあのテーマ曲。

スタッフや脚本を選び自らが信じる道しか進もうとしなかった信念はどこへやら、60年代半ばからはただ金のため取るに足らない作品への出演を重ねていた過去のカリスマが、これこそが起死回生の機会とその口に綿を入れてまで役作りに没頭し、その姿に影響された若き才能の数々が、キャスティングの妙もありその重厚なドラマの中に絶妙な個性の華を開いていく様を見ると、これはやはり生まれるべくして生まれた傑作なのだという感を改めて強く抱いてしまう。

(評価:★5)

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